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「北恩加にあったときは、朝からお客さんが並んでたらしいですね。僕はそのときはまだ行ってはなかったんですが」

 そのころとくらべると、街の雰囲気もずいぶん変わったようだ。

 

「昔はうどん屋さんとか、お寿司屋さんとか、焼肉屋さんもあったけど、結局、全部やめてます。昔からやってるところで残ってるのはうちと、そこのフロールという喫茶店だけと思います。中華料理屋さんはいちばん多いとき、この一角だけで4軒あったです」

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「高校生のときからアルバイトで」

 そのあとこちらへ移り、44年くらい経つ。そのころからアルバイトをしていた池田さんは、親方が田舎へ移住することになったタイミングで店を引き継いだ。

「高校生のときからアルバイトで。で、乗っ取ったの(笑)。ここ、娘さんしかいてなかって、(移住後を)どうすると話しとったから、もうこっちからいうたんです、『やらしてくれ』って」

 

 出前のバイトを経て正式に就職し、着実に仕事を覚えていったのち、38歳だった平成15年に店を継いだ。なかなか素敵な展開だが、それだけの魅力がこの店にあったのだろう。

「自分の口に合ったんですよ。おいしいなと思って(笑)」

 口に合った味について聞いてみよう。まずは、いかにも昭和なラーメンから。

 
 

「結局は40年以上前から同じこのラーメンですからね。いうたら、中華そば、みたいな。出汁は鶏で、『あっさりしたダシです』っていってます。麺は、いまは(業者から)取ってます。もう手が回らないです(笑)」

 とはいえ過度に主張しすぎない麺も、スッキリとしたスープと相性抜群。もやしやチャーシューの、名脇役としての存在感も申し分ない。時代の波に左右されることのない正統派である。だが、550円とは安すぎやしまいか?

「いうても、去年の10月まで、もう50円安かったんです。前は450円で、税込み495円やった(笑)」