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神戸で出会った“理想的な中華料理屋” 74歳店主がつくる「400円のラーメン」はホッとする味だった!

B中華を探す旅――神戸「春日飯店」

2022/09/20
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 最寄駅は、阪神電車の春日野道駅。地上北側に出る階段を上がると、アーケードが日光をほどよく遮るそこが「春日野道商店街」だ。人通りはそれほど多くないものの、シャッター通りだと感じさせるほど寂しい雰囲気ではない。地方都市の商店街の、穏やかな平日午後といった印象。

理想的な「B中華」を発見!

 西国街道の交差点を越えてさらに進むと、右に折れる路地がある。その左手すぐに見えてくるのが、目指す「春日飯店」である。

 上部に店名と電話番号を白く抜いた赤い日除けがかかっていて、店頭にも黄色い立て看板がある。間口が非常に狭い。右側の小さなドアは厨房につながるもので、客用の入口は左側。だが、赤いのれんが大きすぎるくらいにドアは小さめだ。したがって、のれんの右端は畳まれており、「味自慢 ラーメ」という状態になっている。

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 いやー、これは渋い。思わずニヤけてしまうほどに渋い。これこそまさに、理想とするB中華である。

B中華の定義

・  大前提の昭和感

・  ビールと餃子で落ち着ける

・  店主や常連さんと仲よくなれることが目標

・  もちろんラーメンにも期待

・  ただし雰囲気重視なので、味には妥協してもよい

「こんにちは」と入ってみれば、店内がまた素敵だ。右側の厨房を囲むようにL字型のカウンターがあるのみで、わずか8席しかない。したがってほぼ満席だが、タイミングよくいちばん奥の席が空いたので、厨房が見渡せるそこに落ち着くことにする。すぐ目についたのは、厨房がピカピカに磨かれていたこと。こういう店は、間違いなく信頼できる。

まずはビールと餃子を注文

 ともあれ、まずはビールと餃子を注文だ。

 

 特徴的なのは、13時半を過ぎてもなお、次から次へと来客があること。われわれ以外はほぼ全員が常連のようで、いかにも関西っぽいおばちゃんが、店のお母さんと軽快なトークを繰り広げていたりする。そして、そこに絶妙のタイミングで同じく常連と思しきおっちゃんが加わる。とはいえよそ者を排除するような空気が流れているわけではなく、食べ終えると誰もが早々に帰っていく。そして、すぐまた別の客が入ってくる。小さな店のなかで、心地よいリズムがキープされているのである。