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神戸で出会った“理想的な中華料理屋” 74歳店主がつくる「400円のラーメン」はホッとする味だった!

B中華を探す旅――神戸「春日飯店」

2022/09/20

 お母さんの「はい、餃子です」という明るい声とともに登場した餃子は、大きさもちょうどいいひと口サイズ。適度に焦げた皮の香ばしさと野菜のうまみが、いい感じで調和する。次いで登場した豚天もカリッとした食感がよく、つけ合わせのキャベツとの相性も申し分ない。かと思えば半熟卵がのった五目焼きそばもアテに最適で、必然的にビールが進む。前回の「宝美園」に続き今回もまた食欲旺盛な地元の友人が一緒なので、以後も八宝菜に焼き飯と、いろいろ注文してしまう。

 
 
 

74歳の店主が語る、町の変化

 お昼の営業が14時までということで客足が途絶え始めたころ、店主の森岡利徳さんに東京から来たことを告げる。髪がきちんと整えられており、見た目にも気を遣われていることがわかる。

「もう58年だね。ずっとここ。大きいならんとね、もうこのままですわ。(奥様と)2人でね、もう気ぃつかわんとね。人使うたら気ぃつかうでしょ。僕、気ぃつかうタイプやからあかんのです(笑)」

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 74歳。生まれは大阪の吹田だが、生まれてすぐこのあたりに移ってきた。58年も経つのだから、地元の常連さんが多いのも当然。人と人との交流が残る、いい環境だ。しかし、それでもずいぶん町の雰囲気は変わったのだそうだ。

 

「震災(阪神淡路大震災)前までは会社とかおったんですわね。物品販売、川鉄(旧川崎製鉄)とか神戸製鋼とか。それは24時間操業で、絶えず職工さんがおったんで、物品販売で栄えとった町です。もうなんでもあったんです。でも、それがみんな地震で撤退して、地方に行ってもうて。ほな子会社もそれについてどこかへ行ってもうて。このへんは会社がなくなって、職工さんもおらんようになって、それでダメになったんです。そんで、いまはあちこちマンションができて、まあ、けったいな町になりましたわ」

 前述したとおり商店街もそれなりにいい雰囲気だと感じたのだが、それでもずいぶん変わったようだ。