3月18日に開幕する選抜高校野球大会から、金属バットの新しい基準が適用される。日本高野連の狙いは、従来までのバットより飛ばなくすることだ。
「普通に考えたら、高校通算本塁打は減るでしょうね。でも、いい打ち方している人は変わらないんじゃないですか」
そんな話をしてくれたのは通算471本の本塁打を放ち、歴代トップ10入りまであと5本と迫る西武の主砲・中村剛也だ。
高校時代に通算83本塁打をマークした中村は、プロでも通算6度の本塁打王タイトルを獲得。高校時代の本塁打数はプロでの活躍に直結していないのが実情だが、中村はプロでも着実に成績を積み上げてきた。
そんな中村から見て、甲子園での“飛ばない金属バット”導入はどんな影響があるのだろうか。
「危険だからバットを飛ばないものにするんですよね。すごくいいことだと思います。僕の時代の金属バットは“やばかった”ですからね。でも僕はプロに来て木製バットに変わっても、そこまで苦労はしなかったんですけど」
中村が「やばい」という当時の金属バットは重さの規定がゆるく、とにかく打球がよく飛んだ。「こんな便利な道具はない」というのが当時の中村の印象だったという。
「高卒ですぐに活躍する選手が減ってきましたよね」
中村がプロ入りした2002年以降も、打球の飛びすぎ問題は加速傾向にあった。
高校通算で100本塁打を記録する選手が現れたのも、技術の進化という以上に、バットの性能が上がったからではないかと考える指導者も多かった。2018年の夏の甲子園で、作新学院の小針監督が「最近の高校野球はボールが飛びすぎている」と警鐘を鳴らしたこともあった。
中村自身は金属から木製のバットにスムーズに適応したが、プロ選手を見ていても「飛ぶ金属バット」の弊害は感じるという。
「高卒ですぐに活躍する選手が減ってきましたよね。それは金属バットの影響もあるんちゃうかなと思います。高校を卒業して木製になると、振れなくなる選手も多い。金属の時より詰まるのが怖くて弱いスイングになっていくんですよ」