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 中村も、飛ばないバットの導入によってプロの木製バットに早く適応する選手が増えてくる可能性に期待しているという。

「今ではウェイトも主流になってきて、力をつけて力任せに振れば(飛ぶ金属バットでは)簡単に打てる。でもそれが後々に問題になる。逆に飛ばないバットでも打てるようになったら、プロでも木製に苦労せず打てる選手が出てくるんちゃうかなと思うんですよね」

 道具の過剰な力を借りれば、技術が足りなくてもたしかにヒットは打てる。しかし、中村のように技術を若い時から身につけられれば、プロに入っても早くから活躍できる選手が生まれるということである。

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 日本の投手が世界的にレベルが高いのは、これまでの長い歴史の中で、飛ぶ金属バットを手にした打者たちと対戦してきたからだろう。150キロを超える速い球、精密なコントロール、あるいは、手元で激しく変化する球種などがないと打者を抑えられなかった。金属バットが投手を育てたという側面もあった。

清原の「甲子園通算13本」の記録を更新するのはさらに難しく?

 高野連はあくまで怪我予防、打球の危険を回避するためバットの基準を改めたが、この変更が野球全体にとって大きな曲がり角になる可能性はある。

甲子園通算ホームラン1位の清原和博と2位タイの桑田真澄 ©時事通信社

 日大三の監督に就任した小倉が腹をくくったように、スケールの大きい打者を育てることを目指すのか、それとも最初から諦めて小さな野球を選択するのか。現場を預かる指導者たちの責任は大きい。

「飛ばないバット」の導入で、清原和博の甲子園通算13本塁打や中村奨成の1大会6本塁打のような大記録は確かに生まれにくくなるかもしれない。それでも、飛ぶバットに頼らずボールを飛ばす選手たちが増えたら、日本の野球はもっと面白くなる。

「フォームは変わっていますけど、僕のバッティングは高校から変わっていません。ずっと続けているのは力任せではなく、バットを内からしっかり出していくと言うことだけですね」

 ホームランキング通算6度のスラッガーの言葉は説得力があった。