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「浜崎さんが怒っているらしい」と業界で噂に…浜崎あゆみの半生を描いたドラマ「M」最終回当日に本人が見せた“思わぬ反応”〈鈴木おさむが語る〉

『最後のテレビ論』より #2

2024/03/27

source : 週刊文春出版部

genre : エンタメ, テレビ・ラジオ

note

 おそらく、名のある人よりも、新人を抜擢した方が、デビュー当時のアユ感が出ると考えたのだろう。確かに、サクセスストーリーはすでに売れている俳優さんがやっても、どこかしっくりこない。中島美嘉さんが女優としてデビューしたドラマ「傷だらけのラブソング」のように、新人の方がリアリティーがあり、ドラマのヒットと共に、出演者もブレイクしていくという夢がある。

 撮影が近づいてきて「やっぱり安斉かれんで行ってほしい」という強い要望があったので、結果、みんな納得してアユ役は安斉かれん。マサ役は僕も一緒に作品を作った経験が何度かあった三浦翔平君になった。

90年代の芸能界の裏と表が垣間見えるドラマに

 安斉かれんさんになると決まった時点で僕はいくつかリクエストさせて貰った。アユとマサのラブストーリーだけではなく、90年代の芸能界の裏と表が垣間見える話にしたいということ。それはOKしてもらえた。

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 そして自分の中で「良質なラブストーリー」ではなく、とにかく、見てる人がSNSで突っ込みたくなるような、そんな余白のあるドラマにしたいと思った。僕は80年代の大映ドラマが大好きだったので、堀ちえみさんの演技が話題になった「スチュワーデス物語」を彷彿させるものにしたいと。

 ただ、この時点では、みんなのイメージする完成形は違った気がする。そして、脚本を書いて、撮影して、放送になる。

 安斉かれんさんの新人丸出しのお芝居は、まさに昔の大映ドラマのようで、僕は「いいね、いいね」と思った。三浦翔平君演じるマサの無駄すぎる熱さ、田中みな実さんの怪演。

 緊急事態措置に入ったばかりで在宅率も高い。その中で、このドラマは、SNSがかなり沸いた。突っ込みまくっている。

鈴木おさむさん ©文藝春秋

初回放送後に三浦翔平から「これ、大丈夫なんですか?」とLINEが…

 放送をリアルタイムで見ていたのだが、エンドロールになった瞬間、ある人からLINEが来た。秋元康さんからだった。一行「これはバズるな」。その一言で、とても安心できた。

 だが、その直後にもう一通LINEが来た。三浦翔平君から「これ、大丈夫なんですか?」と。

 気持ちはわかる。三浦翔平君はおそらく「良質なラブストーリー」というイメージだったのだろう。

 だけど完成品を見たら、それとは全然違う。SNSも突っ込みまくっている。不安になったのだろう。