柴咲コウは代表作の多い女優だ。
主演した映画『世界の中心で、愛をさけぶ』(04年)は爆発的なヒットを記録し、原作小説の帯に推薦文を提供した彼女は「セカチュー」ブームの中心となった。ヒロインを務めたドラマ『GOOD LUCK‼️』(03年)は最高視聴率37.6%を記録、続く青春ドラマ『オレンジデイズ』(04年)も大ヒットした。
ミリオンセラーも『Dr.コトー診療所』も『ガリレオ』も
単独主演を務めて、高い評価を得た大河ドラマ『おんな城主 直虎』(17年)も彼女の代表作のひとつだ。キャリア初期の殺人マシーンを演じてセンセーションを巻き起こした『バトル・ロワイアル』(00年)や、女優賞を総なめにした『GO』(02年)を思い出す人もいるかもしれない。アーティストとしても精力的に活躍しており、RUI名義でリリースしてミリオンセラーとなった「月のしずく」も彼女の代表作と言っていいだろう。
これだけヒット作のタイトルを次々と出てくる女優はなかなかいない。なかでも多くの人に親しまれている代表作の一つが、内海薫刑事を演じた『ガリレオ』シリーズだ。柴咲のキャリアの中で、複数のシリーズにわたって長期間同じ役柄を演じたのは、『Dr.コトー診療所』(03年~)と『ガリレオ』(07年~)のみである。
「目力の強さ」でドラマ『ガリレオ』のヒロインに
東野圭吾原作の推理小説を映像化した『ガリレオ』シリーズは、福山雅治演じる天才物理学者・湯川学が、明晰な頭脳で超常現象を解き明かして難事件の真相に迫るというもの。ドラマ『ガリレオ』(07年)は平均視聴率20%を超える大ヒットとなり、その後スペシャルドラマ3作品、ドラマの第2シーズン、映画3作品が発表された。
原作小説では、湯川に捜査への協力を依頼する刑事は草薙俊平(北村一輝)だったが、映像化作品では女性刑事の内海薫に改変されている。ヒロインが必要というテレビ局側の要請に従って東野圭吾がキャラクターを考案したもので、先行して発表された小説に「目力の強さ」という表現があったため、柴咲がキャスティングされた(シネマトゥデイ 2022年9月16日)。
内海は正義感にあふれ、人一倍感受性が強い人物だ。殺人事件について「実に面白い」と言った湯川に「あなたを面白がらせるための事件じゃないの!」と激昂したのも、人に対して誠実であろうとする内海の性格の表れだろう。常に沈着冷静な湯川と、時に感情を露わにする内海のコンビは『ガリレオ』シリーズに欠かせないものとなった。
柴咲は『ガリレオ』撮影当時、内海について、「重くなくって明るい性格の子、っていうのは、あまりやったことがないんですよね」「お酒を3杯くらい飲んだトーンでやっていけばいいのかな、って思っています」と冗談めかして語っていた(『ガリレオ』公式サイト)。