「テレビドラマの最初の方は、キャラクターを通して(ドラマを)盛り上げないと(いけない)みたいなところがあったし、ちょっと声のトーンも高くて、賑やかし的なところがあったり、湯川先生をたきつけたり、怒らせたり、嘆かせたりする役割だと思っていた」(モデルプレス 22年9月16日)
「刑事の勘」を訴える内海を「実に非論理的だ」とすかさず否定する湯川。二人のやりとりはファンにおなじみのものだ。いつも“奇人”の湯川に振り回されているように見える内海だが、西谷弘監督は内海について「本来とても頭のキレる人。僕の中では“2人は常に互角”と捉えて撮影しています」と明かしている(cinemarche 22年9月15日)。
映画『容疑者Xの献身』(08年)では、二人の関係が深化していた。友人・石神(堤真一)の犯罪に揺れ動く湯川の背中を「こんな終わり方でいいの?」と最後に押したのは内海である。一方、湯川は内海に「友人として聞いてくれるか?」と真実を語り出す。内海は単なる「賑やかし」ではなくなり、二人は名実ともに対等なパートナーになった。
鈴木吉弘プロデューサーによると、映画撮影後に続編の企画が立ち上がったとき、柴咲は自ら降板を申し出たという。「湯川先生の隣には、彼を理解できず、振り回されてイライラしっ放しの新人がいい」「天才ガリレオを理解し始めた薫じゃだめだと思う」と降板理由を理路整然と語って鈴木を驚かせた(ORICON NEWS 13年7月4日)。
30代になった内海が警察組織という男社会の中で苦闘する姿を描くスピンオフ『ガリレオXX 内海薫最後の事件 愚弄ぶ』(13年)に出演し、柴咲は『ガリレオ』シリーズから姿を消す。だが、その後も、湯川、内海、草薙の共演を求めるファンの声は絶えなかった。
そしてついに、柴咲が9年ぶりに内海役を演じる3作目の映画『沈黙のパレード』(22年)が制作されることになる。
『沈黙のパレード』で復帰した「42歳の内海薫」
殺人事件の被害者家族と周囲の人々の苦悩を描く『沈黙のパレード』を『ガリレオ』シリーズたらしめているのは、湯川と内海と草薙の3人の関係である。湯川と草薙は学生時代からの親友であり、内海は先輩刑事の草薙を尊敬している。そして湯川と内海はお互いを理解し合っているパートナー。3人の信頼と絆が作品の根幹を支えている。
草薙役の北村一輝は「お2人に対しては家族みたいな安心感があります」と語る(TVer Plus 22年9月15日)。湯川役の福山雅治は「我が家」と表現し、柴咲は「すごいしっくりきますね」と笑ってうなずいた(GLOW 22年9月21日)。