メタボ健診のペナルティ
書籍前章の最後に私は健診を受けていませんと書いたのは、現在およびこれからのことで、去年までは福祉系の大学に勤務していましたので、毎年、メタボ健診を受けていました。ほんとうは受けたくないのですが、受けないと共済組合に迷惑がかかるので、仕方なく受けていたのです。
特に症状もないのに、検査の報告書で正常だといわれても別にありがたくないし、どちらかといえば、検査で半日つぶれるほうがいやです。いつも基準値を超える血圧や、LDLコレステロール(メタボの基準には含まれませんが、検査項目に入っています)で、あれこれ注意を書かれることにもムカつきます。
報告書にはイラストつきで検査の異常に関して、脅かすようなことがいっぱい書いてあります。私は腹囲が年によって基準値を出たり入ったりしていたので、85センチを超えた年は「予備軍」と判定され、すぐにも医療機関を受診して、望ましい治療と生活習慣の指導を受けるよう勧められます。だれが受けるもんかと、即、報告書を引き出しの奥に放り込んでいましたが、一般の人が読めば、すぐにでも医療機関に行ったほうがいいように書いてあり、ほんとうにあざといなと思ってしまいます。
共済組合に迷惑がかかるというのは、メタボ健診にはペナルティがあるからです。
厚労省の「2020年度の後期高齢者支援金の加算・減算について」には、こうあります。
〈加算(ペナルティ)の計算方法〉
2018~2020年度の後期高齢者支援金の加算は、特定健診57.5%(総合は50%)未満、保健指導10%(総合は5%)未満を対象範囲とし、各年度ごとに対象範囲と加算率を設定
すなわち、対象者の半分以上がメタボ健診を受けない場合や、保健指導の対象者の10パーセント以上が指導を受けないと、その自治体や企業の健康保険組合への後期高齢者支援金を、最大で10パーセントカットするというのです。だから、該当者(40歳から74歳)は、メタボ健診を受けるよう指導されますし、メタボ該当者や予備軍は特定保健指導を受けるよう無言の圧力がかかります。
メタボ該当者や予備軍が多いと、それだけ特定保健指導の対象者が増えるので、肥満している人は冷たい目で見られたり、差別やいじめの対象になることもあり得ます。
ペナルティを逃れるためには、メタボの非該当者が多く受けてくれるほうがありがたいので、そういう人の受診が積極的に勧められ、逆に受けたほうがいい人にはあまり積極的に勧められなかったりもします。
厚労省はなぜペナルティまで設けてメタボ健診を受けさせようとするのでしょうか。
それは同省が国民の健康と、医療費の削減を真剣に考えているから、とも考えられますが、今ひとつ説得力に欠ける気がします。どうしてもウラにその状況が好都合な勢力というか、業界の存在を感じてしまうのは私だけでしょうか。