日本だけが女性にゆるい基準を決めている
同じく腹囲に関する疑問ですが、男性と女性を比べると、当然、女性のほうが小柄だし、ウエストもくびれている印象があるのに、日本の基準では、男性が85センチ、女性が90センチと、女性のほうがゆるくなっています。
国際的に見て、女性にゆるい基準を決めているのは日本だけで、アメリカやイギリスでは、うらやましいことに、男性は102センチまでOKとされています(女性は88センチまで)。英米人と日本人は、そんなに体格がちがうのでしょうか。もしも、日本もこの基準で見たなら、メタボの人はかなり減ることでしょう。
ちなみに、ドイツやフランスなどは国際糖尿病連合(IDF)の基準で、男性94センチ以上、女性80センチ以上が肥満と判定されます。IDFは日本を含め、中国や南アジアの国の基準を男性90センチ、女性80センチとしていますが、日本の学会はそれを無視してあくまで独自の基準を貫いています。
それにしても、腹囲のように恣意的に変えられるデータを「必須項目」にすることに、どれほどの信頼性があるのでしょう。
私は一度、思い切り腹部を膨らませたときと、逆にへこませたときで測ってみましたが、13センチもの差がありました。もちろん、85センチをまたいでいます。身長や体重の測定値はいくら頑張っても動かせませんが、腹囲はこれだけ動かせるのです。多くの人が、測定時に腹を引っ込めているであろうことは、想像に難くありません。
脂質の基準値に対する一般医の素朴な疑問
「選択項目」の脂質では、トリグリセライド(中性脂肪)とHDLコレステロールが問題にされています。
私は脂質代謝の専門家でないので、一般医としての素朴な疑問ですが、中性脂肪を基準にするのはいいとして、なぜLDLコレステロールではなく、HDLコレステロールを問題にするのでしょうか。
ご存じの通り、コレステロールには「善玉」と「悪玉」があり、「悪玉」は動脈の壁にコレステロールを蓄積させ動脈硬化を強め、「善玉」は動脈の壁からコレステロールを?がして肝臓に運んで代謝し、動脈硬化を阻止してくれます。「善玉」がHDLコレステロールで、「悪玉」がLDLコレステロールです。HDL、LDLというのは、コレステロールと結合するリポプロテインというタンパク質で、水に溶けない脂質であるコレステロールを、血液中に溶かす役割を担っています。HDLは高比重のもの、LDLは低比重のものです。
多くのデータが基準値以下を正常としているのに対し、「善玉」であるHDLコレステロールは40mg/dl以上を正常としています。
「善玉」が少ないとメタボの心配が高まるのはわかりますが、「悪玉」が多いか少ないかのほうが重要ではないのでしょうか。