難しいダンスを習えば、脳が大きくなる!
そしてもう一つの「脳に効く活動」、それはダンスです。
まずはカリフォルニア大学アーヴァイン校が行ったアンケートを紹介します。ダンス教室に通う200人以上の生徒のうち、ダンスによって
・82%の人が、記憶力や新しいことを学ぶ能力が向上した
・70%の人が、集中力や注意力が持続するようになった
・95%の人が、情動面で日常的に良い影響が得られている
と答えています。ただこれだけでは、趣味全般の一般的な効果との違いがあまり見えてきません。
ではもうひとつ、こんな研究結果はいかがでしょうか。
60歳から79歳の、認知障害がない健康な被験者を対象に、ウォーキングや栄養摂取、体操、ストレッチなどさまざまな活動や運動を半年間続けることで、脳にどんな変化があったかを調べたものです。
・認知障害がない健康な174名に、難易度の高いダンスのレッスンを半年受けさせて、レッスン開始時と6カ月後の脳の画像を比較しつつ、思考力テストも2度受けてもらったところ、半年間で脳の白質(脳の処理速度や新しい情報を理解して反応する能力に関与している部分)が増えた。一方、ウォーキングやウォーキング+栄養摂取、ストレッチなどの体操を行ったグループの白質は減っていた。
・2017年ドイツで、高齢の被験者による、ダンスと同程度の負荷の「有酸素運動」を半年間つづけたことによる脳の変化をみたところ、ダンスをしていたグループだけ、脳の4つの部分の量が大幅に増えていた。
いずれも運動ですから、身体にさまざまなよい影響があることはおわかりいただけると思いますが、ダンスは特別に「脳に効く」運動、ということがいえそうです。
ダンスは、“脳の回線“を配線しなおす
それは、特に自由形式のダンスには瞬時の判断が必須で、脳は回路を配線しなおす必要がある、とされているからです。再配線はまさに、脳の働き方が外的刺激で変わっていくこと=神経可塑性が起きている、ということ。たとえば脳疾患で運動障害が残ったとしても、リハビリで回復するようになるのは、まさにこの神経可塑性のたまものです。損傷したはずの脳神経回路の周辺に、新たな神経回路ができ、そこがうまく働くことで以前と同じ動きができるようになる。それとメカニズムは一緒、と考えていいのです。
「日本における認知症の高齢者人口の将来推計に関する研究」の推計では、65歳以上の認知症患者数は(各年齢の認知症有病率が一定の場合)、2025年には約675万人(有病率18.5%)と5.4人に1人程度が認知症になると予測されています。
この数字をすこしでも良くする一つの処方箋、それが「ダンス」なのです。