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「語学学習」は海馬を大きくし、認知症の進行を遅らせる
ただ、研究の数だけでいうと、今挙げた3つよりも、はるかに多くの研究データが「効果あり」と認定している活動が2つあります。
まず1つ目は、語学学習です。
・2012年、スウェーデン軍士官学校の語学留学生と、語学を学んでいない学生を比較した研究があります。両者に3ヶ月間、同じ難易度の学習課題を課し、その実験の開始時と終了時に脳画像を撮影した。すると、終了時には語学を学んだ学生の脳のいくつかの部分が大きくなっていたが、語学を学ばなかった学生の脳は変化がなかった。
脳のさまざまな部分が大きくなる傾向がありましたが、特に大きくなったのは脳の海馬(記憶中枢を司る部分)。しかも語学が苦手で、一生懸命努力した者の脳の方がより大きくなったのです。また、習熟度が進んだかどうかよりも、「どれだけ努力して語学習得に取り組んだか」が、脳が大きくなることと関連があることがわかりました。
ちなみにいわゆるバイリンガル、複数の言語を使いこなせる人の脳は、右脳と左脳の情報交換が活発で、前頭葉の灰白質(情報処理を司る組織)が大きい、とされています。
もうひとつ、イタリアでの研究成果を示します。
・同程度の認知症患者で、バイリンガルとモノリンガル(言語を一つしか話さない)85人の脳の画像を解析したら、バイリンガル群が5歳年上だったにもかかわらず、モノリンガル群の進行度と同じだった。
これは、バイリンガルであることが認知症の進行を遅らせている、と考えられます。
何歳であれ、外国語を学ぶことは、間違いなく認知機能を刺激する活動、といえるのです。