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現代社会に蔓延する「呪」も祓いたい

佐藤 今回の映画はファンタジー要素だけでなく、現代社会を反映するような内容にもこだわりました。SNSなどで人が作ったストーリーを信じてしまうフェイクニュースは、まさに「呪(しゅ)」そのものです。そう考えると、現代人は意識的に呪に取り込まれているわけで、これをスッと祓ってくれる陰陽師が現れるとよいのではと考え、安倍晴明を復活させたというのもあります。

加門 「呪」には「のろい」と「まじない」のふたつの読み方があるので、言葉や仕草によって他者や時に自分の意識も捕らわれると考えると、人間生活の多くは「呪」の影響下にあると言えますよね。

 よく、「白魔術」はいい魔術で「黒魔術」は悪い魔術、と言われたりしますが、どちらも自分の運に自ら手を加える「呪」なので、使うには覚悟が必要です。中国では「祝(しゅく)」もマジナイそのものとして使われるので、そういう意味では「祝」と「呪」は表裏一体だと私は思います。

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 佐藤監督のような女性監督がこの映画を撮ったことにも大きな意味があるように感じますが、いかがですか?

佐藤 90年代にデビューした女性監督って、いま私と河瀬直美さんくらいしかいないんですよ。デビューした時は、自分がいまの年齢になる頃には、世の中に女性監督が100人くらい活躍しているイメージだったんですけど、現実は寂しい。

©細田忠/文藝春秋

 日本に限らず、世界的に「ビッグバジェットの作品は男性監督が撮る」という空気が蔓延しているように感じるので、そんな「呪」も『陰陽師0』で祓っていけたらいいなと思います。

加門 科学技術が発達した現代社会でも、人が人でいる限り「呪」がなくなることはないんですよね。「呪」に取り込まれず、自分に向けられた「呪」にどう対処するかを知るためにも、陰陽師の力は必要だと思います。ぜひ、多くのみなさんに劇場で体感していただきたいですね。

佐藤 アイデアはたくさんあるので、シリーズで10本くらい撮りたいですよね。今後もぜひ、期待してください(笑)。

さとう しまこ 1964年岩手県生まれ。ロンドン・インターナショナル・フィルム・スクールで映画製作を学ぶ。これまでの監督作品に『エコエコアザラク WIZARD OF DARKNESS』(95)、『K-20 怪人二十面相・伝』(08)、『アンフェア』シリーズ(07、11、15)など。また、映画『BALLAD 名もなき恋のうた』(09)、ドラマ『ハイエナ』(23)などの脚本も手掛ける。監督・脚本を務めた最新作『陰陽師0』は4月19日公開。

 

かもん ななみ  東京都生まれ。美術館学芸員を経て、1992年、『人丸調伏令』で小説家デビュー。少年・安倍晴明を主人公にしたオカルトファンタジー『晴明。』シリーズ(95、96)や『祝山』(07)、『目囊』(16)などの小説、日本の呪術、風水などへの深い知識を活かした『お咒い日和 その解説と実際』(17)、『呪術講座 入門編』(24)等のエッセイやノンフィクションを発表。近年は『陰陽師0』ほか映像作品の呪術監修も務める。

陰陽師0 (文春文庫)

夢枕 獏 ,佐藤 嗣麻子

文藝春秋

2024年4月9日 発売

 

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