「人間の目の動きは、本を読む時とディスプレイ上の文字を追う時とでは違うのだ」

 英国の名門パブリックスクール卒業者は、なぜ「本を電子書籍では読まない」のか……? ジョー・ノーマン氏は、英国最古の名門パブリックスクール(中高一貫校)であるウィンチェスター・カレッジで学び、オックスフォード大学に進学。現在は英国名門パブリックスクール専門の受験教師として活躍している。ここではノーマン氏の新刊『英国エリート名門校が教える最高の教養』(文藝春秋)より一部抜粋してお届けする。(全2回の2回目/前編を読む)

なぜ英国エリート校出身者は、電子書籍ではなく「紙の本」を読むのか? 写真はイメージ ©getty

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電子画面を見るな

 紙の本と電子書籍のディスプレイはどう違うのか。

 紙の本は安い。お風呂に落としても問題ない。紙の本でメールは送れない。紙の本に電気は必要ない。現代文明が崩壊しても、紙の本は読める。

 一方、電子書籍をリーディング・デバイスやパソコンの画面で読むことの問題は、周りの何か別のものがいつでも目についてしまうことだ。もっと面白くて、その場で楽しめるものが常に読めてしまうのだ。

 最近の調査で、紙の本の読み方と電子書籍の読み方は違うことが明らかになった。人間の目の動きは、本を読む時とディスプレイ上の文字を追う時とでは違うのだ。紙の本を読む時は、(西洋の横書きの文書の場合)E字型に動く。左から右に一行ずつ読んでいく。ところがパソコンやタブレットやスマホなどでの読書になると、目がF字型に動くのだ。最初の数行は目を左から右に動かしてじっくり読み取るが、あとは左側のマージンに沿って目が降りていくだけ。確かにコンピューターやタブレットやスマホでの読書は集中力が落ちるかもしれない。実際わたしもそう感じる。

 人類は数千年にわたって本から情報を得てきた。一方、電子書籍の歴史はまだ20年くらいだろうか? よって、書かれたものに本気で集中したいのであれば、印刷しよう。

 ディスプレイ上の読書は戦いだ。見たこともないような超巨大企業が次々と立ちはだかる。巨大企業はあなたと同じような人が書いた文や撮影した写真であなたの注意を引いて利益を上げている。というのはその文や写真の脇には別の企業バナー広告がちらちらしていて、巨大企業はこの広告料を得ているのだ。巨大企業はディスプレイ上にどこかで見たような文や写真をちりばめて、ユーザーの注意を引きつけようとする。そうすればその脇で宣伝しているものをユーザーに買ってもらえるからだ。