新しいセンスのラグジュアリーホテルから、産後ケアリゾートなどの社会性の高い事業まで、業界に風穴をあけるホテルプロデューサー・龍崎翔子さん。初の著書『クリエイティブジャンプ』の刊行を記念して、盟友のクリエイティブディレクター・辻愛沙子さんと語り合った。

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龍崎翔子さん(左)と辻愛沙子さん 撮影・榎本麻美(文藝春秋)

大学在学中にキャリアをスタートした二人

龍崎 今日は、年がほぼ同じの友人で、同志ともいえる辻愛沙子さんをゲストにお招きしました。仲がいいのにこうして公の場で対談するのは初めてで、すごく楽しみです。

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 出版おめでとうございます! お声がけとても嬉しいです。ふたりとも大学在学中にキャリアをスタートしていますが、はじめて龍崎さんを知ったのは今から8年ほど前、テレビで「北海道でペンション経営をしている東大女子」として取り上げられていたのがきっかけでした。すごい人もいるもんだなぁというのが第一印象。

龍崎 当時、変なことをやっている東大生をひな壇に並べておくのがすごく流行ってたんですよ。社内に辻さんの大ファンがいて「翔子さん、凄い人がいますよ」って教えられ、HOTEL SHE,KYOTOをリニューアルオープンしたときにお招きしたのが最初の接点でした。その時、ロビーに置いてあったピンクのベロアのソファを褒めてくれたのを覚えています。

 すごく素敵なソファで、生地の型番を聞いたほど(笑)。

 まず、新著の推しポイントから語らせてもらいますが、クリエイティブって言語化が難しく、属人的に「この人だからできる」と思われがちな領域ですが、明晰に体系立てて、どういうプロセスとロジックでこのアウトプットが生まれたのかが書いてあって非常に学びがありました。

 説教臭さや資本主義的なガツガツ感が一切なく、龍崎さんならではの気の利いたフレーズが沢山あって、「美意識のある」珍しいタイプのビジネス書。著者の人格が手に取るように感じられる文体で、すごく刺さりました。

龍崎 ありがとうございます。もともと「GENIC」というウェブ媒体でエッセイを連載していたこともあって、初の本をビジネス書として出すにあたっても、著者の手触りのようなものを大事にしました。

龍崎翔子氏

「ビジネス」と「美しい世界観をつくる」はざまで

 たとえば、土地の空気感をいかに伝わる形で言語化するかきっちり方法論を示したあとに、コラムでさらりと「空気感を言語化することの功罪」を書いてたりするんですよね。

 私の広告クリエイティブの仕事では、みんながモヤモヤと感じているものを、わかりやすく誰もが理解できるものに言語化していますが、一方で、「言語化しすぎな時代」だとも感じています。SNSならバズらせたもの勝ちみたいな風潮の中で、すべてを言語化することで逆に平坦になってしまう世界線もあると思う。

 もちろんそれは二項対立的な話ではなく、言語化のメリットもあります。龍崎さんは「ビジネスの視点」と「美しい世界観をつくる視点」のあわいのグラデーションの中で、考え抜いていますよね。