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「選挙いったらタピオカ半額」つい“人に言いたくなる”コンテンツを設計する方法とは?

「選挙いったらタピオカ半額」つい“人に言いたくなる”コンテンツを設計する方法とは?

source : ライフスタイル出版

genre : ビジネス, 読書, 社会, 働き方, 企業, , 娯楽, 経済

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 ありがとうございます! 意識的にやってきたことと、無意識にやってきたことが混在してるんですが、すごく学びになる指摘です。

 とくにナラティブにのるって大事なことだと思っていて、世の中にすでに存在しているけど可視化されていない欲求って沢山ありますよね。たとえば「保育園落ちた、日本死ね」というブログ、インフルエンサーでもなんでもない、待機児童を抱えたいちお母さんの悲痛な叫びが世の中の同様の声を呼び覚まし、結果、国会まで動かした。

辻愛沙子氏

 選挙に関しても、「選挙行こう」と言われるよりも、「タピオカ半額になるなら行こうよ」というほうが友達を誘いやすい。そういう「行動に繋げやすい芽」に水をやることは意識していますね。

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いかに「人に言いたくなるコンテンツに設計するか」

龍崎 私も仕事をしている中で、「発信上手ですね。SNSの活用法を教えてください」みたいな問い合わせをよくいただくのですが、私たちがやっている施策って、いかに「思わず発信されるものをつくるか」に力をおいています。プロダクトが出来上がったところからどう伸ばすかよりも、サービスや商品を開発する段階で、いかに「人に言いたくなるコンテンツに設計するか」が鍵だと思う。

 例えば金沢のスモールラグジュアリーホテル「香林居」では、思わず人に語りたくなるフックをいくつも作っています。手前味噌ですが、「こないだ泊ったホテル、エントランスにすごい蒸溜器があってさ、金沢で採れた草で蒸溜して、その水でサウナでロウリュとかができるの」「しかも屋上にもサウナあって、金沢の街並みが一望できるんだよね」みたいに、人に体験を説明しやすいんです。

香林居のエントランスにある巨大な蒸溜器 ©水星

 人によって刺さるポイントは違うので、サウナ好きなら地元の草木の蒸溜水を使ったサウナの話をするだろうし、美容に興味のある人だったらこだわり抜いた地産地消のアメニティブランドに目がとまるだろうし、グルメな人だったら台湾の星付きのレストランの料理について話してくれると思う。どのフックからでも説明しやすい状態を予めつくっておく。PRまで含めた企画戦略でクリエイティブを捉えているのが私の特徴かもしれません。

 このようにクリエイティブって体系化できて再現性があるし、そこに実践する人のオリジナリティが乗ると素晴らしいものが生み出されていく。今日の話も本書も、とくに自分らしい仕事のアウトプットをどうしたらいいか悩んでいる人たちに大きな助けになると思いました。

龍崎 自分の体ひとつで、社会の中でいかに新しい流れをつくっていくかにフォーカスして書いたので、仕事の壁にぶつかったことのあるすべての人にお役に立てると嬉しいです。刺激的な対談をありがとうございました。

 こちらこそ、ありがとうございました!

(青山ブックセンターにて)

『クリエイティブジャンプ 世界を3ミリ面白くする仕事術』龍崎翔子 著(文藝春秋)

龍崎翔子(りゅうざき・しょうこ)

1996年生まれ。ホテルプロデューサー、株式会社水星代表取締役CEO。東京大学経済学部卒。2015年、在学中に株式会社L&Gグローバルビジネス(現・水星)を設立し、北海道・富良野でペンション運営を開始。その後、関西を中心に、ブティックホテル「HOTEL SHE,」シリーズを展開し、湯河原、層雲峡をはじめ全国各地で宿泊施設の開発・経営を手がける。クリエイティブディレクションから運営まで手掛ける金沢のスモールラグジュアリーホテル『香林居』がGOOD DESIGN賞を受賞。ホテル予約プラットフォーム『CHILLNN』や産後ケアリゾート『HOTEL CAFUNE』など、従来の観光業の枠組みを超え、〈ホテル×クリエイティブ×テック〉の領域を横断し、独自の事業を展開する。

 

辻愛沙子(つじ・あさこ)

株式会社arca代表取締役/クリエイティブディレクター。社会派クリエイティブを掲げ、「思想と社会性のある事業作り」と「世界観に拘る作品作り」の二つを軸として広告から商品プロデュースまで領域を問わず手がける越境クリエイター。リアルイベント、商品企画、ブランドプロデュースまで、幅広いジャンルでクリエイティブディレクションを手がける。2019年春、女性のエンパワメントやヘルスケアをテーマとした「Ladyknows」プロジェクトを発足。2019年秋より2024年3月まで、報道番組「news zero」にて水曜パートナーをレギュラーで務める。多方面にわたって、作り手と発信者の両軸で社会課題へのアプローチに挑戦している。

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