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中国ドローンが自衛隊空母「いずも」を模擬攻撃 “投稿動画”の衝撃とは…

2024/04/06

genre : ニュース, 社会

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 本稿としてはフェイクの可能性を否定はしないものの、現時点の情報からは数多くの根拠から本物説の蓋然性を推したい。

 第1に、フェイク説の最有力の論拠となっており、フジテレビもこれを根拠とした、艦尾の艦番号の不自然さである。フジテレビ(FNNプライムオンライン)の報道によれば「いずもの艦番号は183なんですが、船の甲板にはその下2桁の83が必ず記されている。(映像の船には)8はあるが、3は書かれていない」となっているが、これは第1次改装前のいずもであって、改装後に文字は薄れている。

 しかも今年2~3月のいずもを撮影したとされるSNSに流布している画像を確認すると、83の文字は薄くなっているが、8の方が若干濃くなっている。マスメディアが空撮したものでは、管見の限りではもっとも最新となる昨年12月1日時点の朝日新聞社が撮影したいずもも8が若干濃くなっている。

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朝日新聞デジタルYouTubeチャンネルより

 この点で投稿された動画は最近のいずもの状態とほぼ一致しており、違和感はない。もちろん、ここまでの状況をAIで再現した可能性もあるが、果たしてそこまでの手間とコストをかける意味があるのか不明だ。実際に撮影する方が簡単だろう。

通常AIで生成すると、不自然な点が見受けられることが多いが…

 第2に挙げられるのが、映像の特性だ。ドローンとAIを活用した課題解決の実績もあり雑誌Wedgeなどにも寄稿しているハッカーの量産型カスタム氏に検証を依頼したところ、

「仮に実際のドローンを使ったと仮定すると、この動画は操縦時にコントローラ側のスマホなどに映る映像ではない。その証拠に高度やバッテリー残量などの表示が見受けられない。また表示部分を切り取った場合には、本来機体に装着されたmicro-SDに保存される映像より画質が下がることから画質の劣化は避けられない。このような点から機体を回収して映像を取り出し編集された映像だと断定出来る。

 この拡散された画像を動画編集ソフトで1600倍に拡大してみたところ、AIで生成する時の癖が見当たらない。通常AIで生成すると崩れや歪みなど不自然な点が見受けられることが多いが、どれだけ拡大してもそれらしい箇所が見当たらない」

 と指摘した。

防衛省自衛隊のAIに対する解像度はまだまだ発展途上

 また彼は「いずもの艦橋のガラスが反射したり、ガラスの向こうが透けている。またいずもの鉄板の微妙な歪みや、太陽光を反射している点など現行のAIでは(再現が)難しいのではないか。特に後方の高速道路上を多くの車が動いていることは注目すべきだ。仮に生成AIを使う場合には学習データがないと難しい。少なくとも、フェイクという主張をするのであればどのようなシステム構成で生成するのかという工程を示した上で同様の映像を再現してからにすべき」とも言及している。

 さらに彼は「防衛省自衛隊のAIに対する解像度はまだまだ発展途上で、正確にフェイクと判別するための分析ができるかも疑問だ」とも語ったが、これは筆者も強く同感するところである。