この動画が何らかの編集をしていることは、否定できない事実
第3に、フェイク説の根拠として「風による甲板の旗のたなびき方向と波が揺れ動く方向の不一致がおかしい」「人っ子一人いないのは疑問」という指摘もあるが、複数の関係者に確認したところ「横須賀港内は山がちなので冬の北風があらぬ方向に吹くことはよくあるので、波と風の向きが違うことはままある」「弱風の場合は風が巻く」とのことだった。
後者については「基地の中は屋内作業が多く、時間帯によっては外にいない」との指摘を受けた。確かに、SNS上に散らばる横須賀港の写真を確認すると、真横からの写真ではあるが人が皆無となっている。問題の動画を投稿した人物も人気のない、停泊するいずもの写真を投稿している。
第4に「風が吹いているのにカメラがぶれていない」という指摘もあるが、これは中国製に限らず現在市販されている殆どの小型ドローンの場合、機体の防振機能に加えアプリの機能として手振れ補正機能がついていることからも特に不思議ではない。
ただし、この動画が何らかの編集をしていることは否定できない事実である。しかしながら、これから述べる根拠を踏まえれば、実際に撮影した可能性が高いのではないか。
実写説の根拠とは
まず実写の第1の根拠は、こうした事例が世界各地で頻発しているという事実だ。2017年に英空母クイーンエリザベスへ民間人の小型ドローンが不時着した上、誰もその事実に気が付かなかった。2020年には米大統領専用機エアフォースワンに小型ドローンが接近した事例も確認されている。昨年12月6日には米本土のラングレー空軍基地が謎のドローンの侵入を確認し、その月に複数回侵入されたとしている。
また横須賀基地を含めて、各地の自衛隊駐屯地や基地に小型民生ドローンが侵入したり、落下した事案が複数発生していることも筆者は複数の自衛隊幹部から確認しており、今まで頻発していた事案の動画が出たとみるべきだろう。実際にSNS上には3年前に不審なドローンが横須賀港付近で飛行していたことを示唆する書き込みもあった。
第2に、手の込んだフェイクを作るよりも実際に撮影を実行する方が楽だという点だ。小型無人機等飛行禁止法が施行されたものの、それは法的に禁止しているだけでしかない。外国人旅行者が国内で海外仕様のままのドローンを飛ばしてしまう事例はこれまでも起きてきた。
また日本でも多く流通している中国DJI社製のMavic3であれば、この程度の撮影は楽々とできてしまう(ただしGPS情報の偽装などを行っていることが前提となる)。航海用レーダー程度であれば周波数も違うので混信も起こらない。