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 実際、過去に観音崎付近で航行中のいずもを、民間人が規制を順守して合法的に撮影した動画も公開されている。合法か違法か、斜め横か直上かという違いはあるものの、能力的には可能なのだ。

 このように総合的に考えてみると、実際の映像として考えた方が辻褄は一致する。もちろんこれは現時点での情報に過ぎないが、少なくともフェイクと主張するならば追試による再現映像を出すべきだろう。

真偽を超えたウェイクアップコール

 ウクライナ戦争や昨年10月のハマスによるイスラエル攻撃の教訓は、ドローンはいついかなる状況でも侵入可能であり、少量の炸薬であっても高価な兵器を機能停止に追い込んだり、爆発物に対する導火線としては十分だということだ。

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 イスラエル軍の反応が遅れた理由は、ハマスの操る小型民生ドローンが小型爆弾をイスラエルの監視カメラ、遠隔操作機関銃、通信中継局などに投下し、目つぶしを仕掛けたことによる。これがイスラエル軍の迅速な反応を封じ、ハマスの跳梁と惨劇を招くことになった。

 韓国では昨年末にこのハマスの戦術を北朝鮮が応用してくることを警戒し、昨年12月に実際にハマスの戦術を再現した国ぐるみの公開演習を行った。

 しかし、日本では残念ながら同様の演習は行われていない。少なくとも今回の事案を奇貨として、今からでも日本仕様ではなく、海外仕様に近いドローンを用いた攻撃や侵入による演習を行い、自衛隊側の知見や練度を上げていくべきだ。

 戦史を紐解けば当然の回答である制空ドローンの開発も急がれる。火縄銃に対して竹束だけで、航空機に対して地対空兵器だけで、戦車に対して対戦車兵器だけで対抗しようという選択肢があり得ないように、火縄銃には火縄銃、航空機には戦闘機、戦車には戦車を中核とするシステムで対抗するのが常道だ。

 日本では地上設置型のレーザーや電子戦兵器といった対ドローン兵器ばかり重視されているが、こうしたアセットは一発当たりは安価でも本体は高価な上に量産が難しい。実際、自衛隊における配備は進んでいない。何よりも地上設置型のために機動力に限界がある。数も少なく、動けないのであれば、飽和攻撃には無力だ。

 そうであるならば、制空ドローンを中核とし、地上設置型の対ドローン兵器や防空アプリで補完する防空システムによって飛車角のように機動させて迎撃させるのが最適解となる。実際、ウクライナではドローンをドローンに体当たりさせて撃墜する事象が頻発している他、各国では日本に先駆けて固定翼機による制空ドローンの開発が進んでいる。単に飛んでくるドローンに対応するという消極的かつ退嬰的な発想ではなく、積極的に低空域の航空優勢を広範に獲得するシステムの構築を目指すべきだ。

自衛隊の有言実行の姿勢こそが抑止力を高める

 もう一つは電波の規制改革だ。対ドローン機材を扱うある日本企業の社長は「電波法の出力規制によって、市街地における対ドローン機材の有効射程距離は100メートル程度にまで低下する」と危機感を筆者に吐露したが、こうした規制も実際の検証によって干渉しない条件や限界を確かめた上で防衛や危機管理分野に限って緩和していくべきだ。

 少なくとも動画が真であれ、偽であれ、ドローンの脅威と可能性は現実のものだ。その脅威に対抗できる知見と能力を強化し、その可能性を生かせるための弛まぬ実験と規制改革は急務だ。こうした事件が起きる度に、ドローンの規制が強化されてきたが、それは日本人のドローンの利活用を低下させ、必然的にドローンに対する知見や経験を社会と自衛隊から奪うことになった。他方で確信犯である犯罪者や工作員に対し規制は無力である。今回の動画の真偽に関わらず、ドローン規制をいたずらに強化するのではなく、適切な緩和を行うべきだ。

 特に今回の動画をフェイクと初手から決めつけたり、防備は万全だと言い張るのは避けるべきだ。それよりも貴重なウェイクアップコールであるとみなし、自衛隊の警戒をより強化し、能力を高めていくという有言実行の姿勢こそ抑止力を高めるのだ。