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――そのときはどうやって落ち着いてもらったんでしょう。

安藤 話に乗っかりましたね。「そうなんですよ、化け物なんですけど、最近おむつの交換を覚えたので、ちょっと換えさせていただいてもよろしいですか」と。

 こちらを「化け物」と認識しているので、その認識を排除しないでそのまま「すみません、すみません」と言って。家族の方に向かって「みんな起きて!」と大声を出されたりしましたけど、それも「みんな寝ているみたいなので、ちょっとだけオシモのほうを、すみません」と言いつつ、交換させていただきましたね。

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陰部洗浄や排泄介助…夜間巡回の仕事内容とは?

――夜間巡回をされていた当時は、どういったスケジュールで動いていたのですか。

安藤 事業所に夜8時半くらいに行って、9時からスタートして車で移動するんですが、一晩でだいたい15~20件くらい回っていました。1件あたり30分以内に終わらせて、仕事を終えるのは朝7時くらいでしたね。

 陰部洗浄と清拭(せいしき。身体を拭いてあげること)、排泄介助、オムツ交換、寝返りをお手伝いするのを2人体制で行ったり、安否確認、利用者さんによってはトイレ誘導があったりするので、なかなか忙しいんです。

――夜間に体位変換などを行わないと褥瘡(じょくそう。長時間の圧迫による皮膚の損傷)ができて命にも関わることがあるそうですが、やはり「命を預かっている」というプレッシャーは強くあったのでしょうか。

安藤 そうですね。私はその場にいませんでしたが、訪問した際にすでにお亡くなりになっていた方もいらっしゃいますし、いつ何があるかわからない現場ではありました。プレッシャーというより、本当に気を付けて仕事をしていましたね。

 

いい意味で仕事と割り切ってご家族をサポート

 あとは、ご家族が日中も働いて、夜中も介護をするのは大変なので、そこをサポートできたら、という気持ちでした。ご家族が看るとなると、どうしてもお互いに気持ちが切り離せない部分があると思いますし。

――例えばご両親の介護や排泄介助となると、元気な時を知っている分ショックな部分もありますし、お互いに優しくなれなくなったりすると言いますよね。

安藤 そうだと思います。だからこそ私はいい意味で仕事と割り切るというか、もちろん愛情を持ちながらですけど、サポートさせてもらっていました。ご家族よりも他人が介護をするほうが楽というか、気持ちの整理はつくと思うので。

撮影=石川啓次/文藝春秋