――楽しみですね。
田口 楽しみと、3カ月も他国でちゃんと生活できるのか、という不安もありますね。まあ、同じ地球なのでなんとかなるかと思ってはいるんですけど。
仕事で海外に行くなんて、夢にも思っていなかった
――田口さん、英語は。
田口 ぜんぜんで、ポケトーク買っちゃいました。もう年寄りにはこれだと(笑)。これを握りしめて街中を歩いていれば大丈夫だろうって。
――休みの日は何をされるご予定ですか?
田口 「プロジェクトX」のナレーションの仕事が入ってるんですよ、僕は。
ロンドンにも録音できる場所があるみたいで。前もって原稿をいただいて、芝居の合間をぬって練習をして、休日に録音を、という形になると思います。まだわからないですけど。
――世界中どこにいても仕事ができる。
田口 いままでなら俳優さんも、バンドもそうですけど、海外に出るなんて考えられなかったのが、国内では有名じゃなくても海外ではすごく知られているとか、本当に世の中が様変わりしましたね。
今回のロンドン公演も、ジブリ作品がヨーロッパで大人気ということが根本にあって実現したもので、日本はアニメとコミックの国ですから。そういう意味でも、仕事で3カ月も海外に行くなんて、夢にも思っていなかった。
90年代から2000年代の初めくらいまでは、出演したインディーズの映画が海外の映画祭に招待されて、よく行かせてもらっていたんですけれども。
「千と千尋の神隠し」で釜爺役を演じる際に心がけていること
――89年に主演なさった塚本晋也監督の映画「鉄男」とか、その感覚とはまた。
田口 違いますねえ、3カ月って。
――体力的にはいかがですか?
田口 意外とね、釜爺は出番が少ないんですよ。
――たしかに。インパクトはありますけどね。
田口 環境によって体力がどういうふうに左右されるかなというのは心配ですけど、あとはやっぱり、声ですよね。釜爺の声は、つぶしてつくってるんですよ。声から役をつくっていったんです。
――つぶしてつくるというのは?
田口 喉に負荷をかけて、年寄りの声にする。
わからんかっ、愛だ、愛!
って、ちょっとノイズっぽい声質にしてるんで。正規の発声ではないので、舞台が好評で長期公演になったときに、「しまった」って思ったんですけど(笑)。自分で自分の首を絞めるというのは、こういうことなんだなって。それが、ロンドンという慣れない環境のなかで続けていったときにどうなるか、少し不安はあります。