アングラ演劇とパンク出身で、出演した映画は数知れず。「名バイプレイヤー(脇役)」として知られる田口トモロヲさん(66)。

 波乱に満ちた下積み時代から、NHK「プロジェクトX」のナレーターを務めた40代の転機、そして「黄昏時」を迎えた60代の楽しみ方を訊いた。(全2回の前編/続きを読む)

 

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40代から60代になって感じる心身と心境の変化

――「プロジェクトX」が18年ぶりに再開というニュースを知って、すぐに田口さんのお顔が思い浮かびました。

田口トモロヲさん(以下、田口) ありがとうございます。

――番組が放映されたのが、2000年から2005年。田口さんご自身も40代から60代になられて、心身や心境の変化はありますか?

田口 もう、歳をとりましたね。確実に。

――どういうところにそれを感じますか?

田口 (少し考えて)昔に比べて、多少ですけど、大事にされる。

――えっ、それはまわりから?

田口 はい(笑)。

 

めちゃめちゃ大変だった、ナレーションの収録

――すみません、なんとなく思っていなかった方向からお返事がやってきて、一瞬戸惑いました。昔は大事にされていなかったんですか?

田口 「プロジェクトX」が始まったときはオーディションからの参加でしたし、ナレーターに気を遣う余裕が番組になさそうな感じでしたね(笑)。当初はどういう番組になるかわからなかったから、みんな必死で、仮ナレが終わったあと、「ちょっと1、2時間ほど喫茶店で待っててください」と言われて、待てど暮らせど呼びにこないまま、けっきょく6時間待ちということもありました。

――6時間。

田口 前日に台本を渡されて練習して、その翌日に仮ナレ、仮のナレーションを入れるんですが、そこからさらに台本を修正して、本ナレを録るというNHK独自のシステムで丁寧なつくり方をしていました。しかも、仮ナレを収録するときに渡される台本は、僕が前日に練習したものからまた変わっているという。

 これでは精神的なモチベーションを保てないと思って、とりあえずシステムをつくりましょうと、こちら側から提案をしました。収録日の午前中に1時間、楽屋で台本を読ませてくださいって。それから仮ナレをして、一旦家に帰る。それで、原稿の直しが上がる目処がついたらスタジオに入って、本ナレを録るという形になっていきました。