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最初の不幸は、JR東海が建設まで引き受けたこと

  リニア中央新幹線の静岡工区がここまでこじれた原因の1つは、「建設主体がJRTT鉄道・運輸機構(独立行政法人 鉄道建設・運輸施設整備支援機構)ではなかったから」だと思う。

  中央新幹線は国の基本計画路線であり、国策である。だからJR東海が建設したとしても民間事業ではない。国が、建設主体としてJR東海を指名したという形をとる。

  過去の新幹線は建設主体が鉄建公団(現・JRTT鉄道・運輸機構)で、JR各社が営業主体を担っていた。しかし中央新幹線は建設主体もJR東海が担った。じつはこれがボタンの掛け違いの始まりだ。

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  整備新幹線の建設は、自治体の強い要請を受けて政府が決定し、地方自治体の財源確保や並行在来線分離などの条件を満たし、環境アセスメント手続きを経てRJTT鉄道・運輸機構が着工する。

  しかしリニア中央新幹線は、環境アセスメント手続きが終わったらすぐに着工だ。実際には設計を発注し、建設会社が工事に携わる。

  JRTT鉄道・運輸機構の役割がJR東海に替わっただけのように見えるが、JRTT鉄道・運輸機構が持っていた新幹線建設のノウハウの中で最も大きな要素は沿線自治体とのコミュニケーションだ。

L0系900番の中間車 東海道新幹線車両に似た作り

  鉄道建設業界関係者からこんな話を聞いた。

「トンネル建設現場から残土が出る。トラックがバンバン通る。それは困るという自治体があるわけです。そんなとき、鉄建公団(当時)は地元とよく話し合って、ダンプのすれ違い場所や警備員の配置など決めた。なるべく予算を抑え、地元も納得する形をとってきた。しかしJR東海は、では道路を拡幅しましょうと言ってすぐ実行する。スピード感があるし、地元としても広い道路が残る。結果としては良いのだけれども、お金で解決して地元を納得させるというやりかたになっている」

  地元とのコミュニケーションが希薄なまま工事を進めようとする反動がもっとも大きく出た場所が静岡工区といえる。環境アセスメントが終わってから着工までには、河川や道路などについて地域の自治体から許可をもらう必要がある。鉄建公団には「地域を説得する」という地道な努力とノウハウがあったが、残念ながら新幹線建設が初めてのJR東海にはその知見がなかった。

  いままでの整備新幹線が、環境アセスメントが終わればスムーズに着工できたのは、鉄建公団~JRTT鉄道・運輸機構の実績と信頼による。

  残土問題や、川や地下水の水涸れ問題は今までもあったが、地元と話し合って、自治体と共同して補償もしてきた。西九州新幹線の時も渇水が起きたが、トンネルからの導水管や新たな井戸を掘って水田に放水している。その実績と信頼があった。

  しかしJR東海は地元との対話が少なく、新幹線を作った実績がないので信用度も低い。静岡県の心配は「本当にやってくれるのか」という点だった。