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 スタジアムの中でも、外でも、彼はいつでもサインに応じている。決起集会には、必ず出席する。ホームゲームの後は必ず、応援団の定位置であるライトスタンドに、選手たちを向かわせる。ファンと握手したり、感謝を表したりするために。

 ロッテの応援団を「ナンバー26」と呼ぶことにしている。大声で熱心に応援する彼らは、チームの登録選手25名の番外選手にあたる、という意味だ。「ロッテのファンは世界一」と何度も公言している。

 

「よくこんなひどいことができたもんだ!」

 東京の眼科製品会社で働く、ロッテの応援団メンバー、安住和洋は、こう語る。

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 何年もロッテの試合を観に行っています。外野席のチケットは、いつだってすぐ取れた。たいてい半分ぐらい空いていますから。ところがボビーがきてから、何もかも変わった。並ばないとチケットが買えない。彼はロッテを特別なものにしました。以前とは違って、ロッテをコミュニティの大事な一部分にしたんです。

 ボビーは、球場の中でも外でも、千葉ロッテマリーンズの驚異的な成功監督ですよ。野球一般、とくにアメリカ野球の、偉大なる大使でもある。彼が実践している改革が実を結ぶには、少し時間がかかるのは明らかです。だからといって、彼を追い出すのはおかしい。経済的な問題を解決するには、ほかに方法があるはずだ。

 スポーツマーケティング企業の重役、アサダ・ダイゴは、ホームゲームのときは、必ずと言っていいほど応援席に現れる。

「よくこんなひどいことができたもんだ!」

 彼は声を荒らげた。

 俺たちのチームは、“真のワールド・シリーズ”が戦えるくらい素晴らしい、と言ってくれた人だぞ。そんなこと言ってくれる人が、ほかにいるか? マリーンズは、読売やソフトバンクのように、大型スター選手やフリーエージェントに、給料を払えるようなチームではないけど、ボビーは素晴らしい仕事をしてくれている。ボビー・ヴァレンタイン以上の監督はいないさ。日本野球に対する裏切りだ。これは日本社会の問題だよ。何かを変えようとすると、すぐ叩かれるんだ。

 ロッテ組織の突然の変化によって、日本プロ野球史に残る、さらなる衝突のシーズンを迎えることになる。