多くのファンに愛された千葉ロッテマリーンズ元監督のボビー・ヴァレンタイン。彼の解任を巡る騒動から15年が経とうとしている。以降、惜しくも優勝から遠ざかっている同球団だが、果たして監督解任は正しい選択だったのか。
ここでは、ジャーナリストのロバート・ホワイティング氏の著書『新東京アウトサイダーズ』(角川新書)の一部を抜粋。かつての解任騒動の内情を振り返る。(全2回の2回目/続きを読む)
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首脳陣によるネガティブキャンペーン
2009年の開幕日から、ロッテの外野席ファンは、瀬戸山に宣戦布告。ヴァレンタイン放出の決定を下したロッテの首脳陣を、愚弄する旗を掲げはじめた。
「瀬戸山を辞めさせたかったら、手を叩こう」
「許せない愚行だ」
スタジアムの保安係は、とくに過激な旗を掲げるファンを退場させたが、すぐに別の旗がはためいた。
応援団は同時に、ヴァレンタインの復帰を要求する署名活動を始めた。
対抗措置として、瀬戸山と組織内の彼の味方は、ヴァレンタインの評判を落とすキャンペーンに着手。外国人選手から賄賂をもらっている、とか、地元のバーで外国人選手をリクルートしている、とか、ロッテの新しいユニフォームのデザインを、自分の息子にやらせて、売り上げロイヤルティをたっぷり懐に入れている、とか。
ロッテの女性社員たちにセクハラをしている、とまで言い出した。彼は日本人嫌いであり、人種差別主義者であり、「クソみたいな日本人のやり方」という英語表現をよく使っている。じつはヴァレンタインは極悪非道で、千葉ロッテマリーンズより、府中刑務所のユニフォームのほうがふさわしい、等々。
瀬戸山が2008年のシーズン半ばに雇った、新しい執行役員球団副代表、石川晃は、ヴァレンタインの人生を、できる限り踏みにじりたいようだった。試合前と試合中のヴァレンタインの指示を、石川が取り消したと言われている。ヴァレンタインがアンパイアと口論になったときには、フィールドに下りてきて、アンパイアに味方したことも、二度あったという。