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 一方で、スター内野手、西岡剛など、厳選したマリーンズ選手の家族には、ご機嫌を取って特別に使用許可を出している。2000ドルのスイート席で、ヴィデオゲーム〈任天堂Wii〉に興じている姿が、目撃されたことさえある。

ファンを愚弄した球団社長

 瀬戸山と部下は、一種の“村八分”をおこなった。気に入らない村人を遠ざけるための、日本に昔からある作戦だ。ヴァレンタインを遠ざけるには、最後のシーズンを、できるだけみじめな結果に終わらせること、しかも早めに彼を辞めさせることだった。そうすれば、彼のサラリーのうち、フロントの分を節約できる。もしもそれができなければ、ヴァレンタインのチーム運営を妨害すること。

 瀬戸山がもっとも嫌ったのは、ロッテがもう一度日本シリーズを制覇し、ヴァレンタイン支持の大きなうねりがさらに大きくなって、球団がヴァレンタインと、新たな契約を結ばざるを得なくなることだ。

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 2009年のシーズン開始から1か月、ロッテの内紛は新段階に突入した。フロントで働いているヴァレンタイン支持者が、役員会の内容を詳細に教えてくれた。それによると瀬戸山は、協調性の仮面を脱ぎ、応援団からの苦情と、彼らが集めている陳情書を、すべて却下したという。

「ファンは鯉みたいなものだ。食べ物をやれば、なんでも食う」

 彼はそういう言い方をしたらしい。

「ライト側外野席は、ヴァレンタイン・ファンだから、もし連中がわれわれのイメージを損なうようなら、本拠地の変更を考えるべきだ。これほどくだらないファンばかりなら、フランチャイズを変えてしまおう。どうせ千葉のファンは、バカばっかりだ」

 瀬戸山は、でっちあげの情報だ、と主張したが、のちに事実であることが判明。彼の発言が明るみに出たことで、抗議の旗がますます増えた。そのうちの一つは、瀬戸山の行動はフロントにけしかけられたせいだ、とほのめかし、また別の旗は、瀬戸山のセクハラを主張した。ほかにも、瀬戸山が今後とるべき道を教示するものもあった。