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「内気な億万長者の息子」と「PL学園元チアリーダーのド派手な女性」が…千葉ロッテマリーンズ監督解任騒動の裏側で育まれていた“奇妙な関係”の実情

「内気な億万長者の息子」と「PL学園元チアリーダーのド派手な女性」が…千葉ロッテマリーンズ監督解任騒動の裏側で育まれていた“奇妙な関係”の実情

『新東京アウトサイダーズ』より #2

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噂は真実ではないと判明したが…

 しかし、もっとも記憶に残るのは、「ボビー、永遠に」という巨大な旗だ。外野席の半分を覆うほど大きく、30列分ほどの高さもある。ある試合のあと、怒り狂ったヴァレンタイン・ファンが、スタジアムの外に集結し、瀬戸山との会見を要求。球団代表と部下たちは、怒ったファンが退散するまで、中に隠れざるを得なかった。

 ヴァレンタイン自身は沈黙を守った。契約書の中に、チーム批判を禁じる条項があるからだ。破れば、クビかサラリーをカットされる。

 しかしシーズン半ばには、応援団の陳情書の署名が11万2000人に達していた。まず父である重光武雄に提出され、東京の〈ロッテ〉と、規則的に日本を訪れる韓国の〈ロッテ〉にも回覧された。しわくちゃの長老は、マリーンズの評判がガタ落ちになっている事態と、息子昭夫のやり方全般に怒り心頭で、ロッテの内情の独自調査を命令。

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 ヴァレンタインもサポーターたちも、この調査によって、瀬戸山と、石川と、米田が失脚することを期待した。年長の重光武雄が、彼らの素行の悪さを知れば、きっとそうなるに違いない、と。

 実際、スタッフの多くがそうなることを期待していた。

 

 ところがあにはからんや……

 調査の最終結果によって——一般には公開されなかったが——、ヴァレンタインにかかわる噂は、真実ではないと判明。実際、インタビュアーの大半は、すべてではないにしろ、ヴァレンタインを支持した。

 ところが結局、老オーナーは、いずれにせよアメリカ人監督は辞めるべきだ、と決断した。困っている息子をこれ以上放っておくわけにはいかない、と思ったか、ほかにどうすべきかわからなかったのだろう。数十年間、自分が所有していた野球チームについて、ほとんど何も知らないからだ。

 いずれにせよ、彼は口には出さなかった。

新東京アウトサイダーズ (角川新書)

新東京アウトサイダーズ (角川新書)

ロバート・ホワイティング ,松井 みどり

KADOKAWA

2024年5月10日 発売

「内気な億万長者の息子」と「PL学園元チアリーダーのド派手な女性」が…千葉ロッテマリーンズ監督解任騒動の裏側で育まれていた“奇妙な関係”の実情

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