「サガらしさとは何か」というと大きな話になるが、「一見するとよくわからないゲームシステムや物語から、それを読み取る暗中模索の遊び」ではないか。親切になり続けるビデオゲームの流れから考えると流れに逆らうパンクのようなゲームだが、だからこそ愛されることもある。
「売るための要素」と「サガらしさ」の相性が決定的に悪い
『サガエメ』は、「サガ」シリーズの集大成であるかのように見せる宣伝をしているがゆえに、必要以上に注目を集めているのではないか。前述のように、実際は『サガ スカーレット グレイス 緋色の野望』の系譜であり、多くの人が楽しめるタイプのゲームではない。
確かに『サガエメ』は一般向けの要素を取り込んでいる。「せんせい」や「最終皇帝」といった過去作へのオマージュがあるし、バトルシステムを視覚的にわかりやすくする要素などがそれだ。
ゲームを売る際により多くの人にリーチすることは重要だ。一方で、多くの人が触れれば、好評のみならず不評も増えるのが当然である。一口にゲーム好きといえども「サガ」の洗礼を受け入れられる人ばかりではないだろう。
『サガエメ』は、というか「サガ」シリーズ自体が(一部の例外を除いて)あまりおすすめできないゲームだ。国内ゲームメディアは雑誌文化を継承しているがゆえに、おすすめする記事は出てきても推奨しない記事はあまり出てこない。『サガエメ』はさすがに堂々とおすすめするようなことは避けられているが、それでも好意的な意見がほとんどだ。ゆえにユーザーが反発するように「クソゲー」といった言葉が出やすいのかもしれない。
筆者はむしろ、前述した3つの要素は「サガだから問題ない」と答えられるし、『サガエメ』を楽しめている。ただ、周回プレイが前提のマニア向けRPGとしてもUI(ユーザー・インターフェイス)やスキップ機能が充実しておらず、サガ好きにもあまりおすすめできないと考えている。それでもいい、と言える人だけが遊ぶような常識外れのゲームといえよう。