一方、昨今のゲームマーケティングにおいて、特にビジュアルは重要とされている。TikTokやYouTubeといったSNSで話題になるには、見た目がよくなければ話にならないからだ。「ビデオゲームは遊ばなければおもしろさがわからない」とよく言われるものの、悲しいかな人間は見た目の印象を退けにくい哀れな存在だ。

RPGに求められているもの

 ふたつめの理由は、バトルシステムの複雑さにある。『サガエメ』はバトルシステムがやや難解であり、それを紐解くのがゲームとしての醍醐味になっている。だが、世間は必ずしもRPGにそういうものを求めている人ばかりではない。

 同じスクウェア・エニックスのゲームを例に見てみよう。2023年に発売された『ファイナルファンタジーXVI』はコマンドを選んで戦う形式からアクションRPGに進化したが、それでもアクションとしての難しさをほとんど求めておらず、むしろわかりやすさを重視している。

ADVERTISEMENT

『ファイナルファンタジーXVI』。シンプルな操作で快適にアクションが楽しめるモードが公式サイトでアピールされている 画像は公式サイトより

 2024年2月に発売された『ファイナルファンタジーVII リバース』もまた、コマンドを選ぶ要素は残しつつもアクションゲーム寄りになっている。が、昔ながらのコマンド選択式バトルもモードによってはきちんと残っているように、完全なるアクションゲームになったわけではない。

『ファイナルファンタジーVII リバース』。難しい操作を必要としないコマンドバトルが売りの一つになっている 画像は公式サイトより

 つまり、進歩を見せつつも斬新すぎないのである(むしろゲーム全般を見ると保守的といえる)。

『サガエメ』は基本的な要素こそ、コマンドを選んで戦う古典的なバトルシステムである。しかし、考えずにコマンドを選んでいると雑魚敵にあっさり殺されるゲームだし、あえて弱い技を選んだり、攻撃しないことが肝要となるルールだ。一見すると馴染みのあるような見た目だが、実際は新しいルールに馴染む必要がある。そこがうまく伝わらず、クソゲーと思ってしまう人が出るのもありうる話だ。