金町駅の先で左側に線路が分岐していく。この添乗取材に先立って記者が沿線を探訪した「新金線」だ。
「このままあっちに行けたら楽しいだろうな」
と思う。北千住駅の手前に差しかかった時、先ほどの忘れ物が見つかったという報告が流れる。まずはよかった。安心した。
16時06分、北千住駅を通過した。この楽しい旅も、もうすぐ終わりだ。しかし、最後の楽しみが待っている。というより、今回の添乗で最大の山場が残っているのだ。
いよいよ「貨物専用線」に進入
南千住駅直前から本線の左側の短絡線に入る。
「短絡線場内進行!」
この列車が走る唯一の「貨物専用線」だ。ここから隅田川駅までの約600メートルは、貨物列車に乗らないと通れない区間なのだ。時速35キロまで落として短絡線に入ると、キーキーと音を立てながらカーブを曲がり、左に見える隅田川駅の横をかすめる。例の跨線橋の下をくぐると最徐行となり、やがて停止した。でも、まだこの旅は終わっていない。
運転士は左脇の窓を開けると後方の信号機を見て、すぐに後ろ向きで推進運転を始める。隅田川駅は頭端式(櫛の歯のように先端が行き止まりの駅)の構造なので、田端側から来る列車はそのまま駅に入れるが、土浦側から来た列車は一度駅の横を通り過ぎて、スイッチバックをして駅に入っていかなければならないのだ。乗務員や駅の作業員にとってはひと手間余計にかかるわけだが、部外者にとっては楽しい。
先頭から最後尾に立場が変わったわが機関車は、ゆっくりと貨車を押しながら隅田川駅「着発七番線」に入線。16時15分30秒、定刻通りの到着。これで我々の旅は終了した。
梯子段を下るようにして機関車を降りる。だいぶ暗くなっていた。
◆
発言者・取材協力者の肩書は取材当時のものです。
写真=日本貨物鉄道株式会社、山元茂樹、杉山秀樹、川本悟士、長田昭二