お金さえ払えば月にも行ける現代で、文字通り「いくら札束を積んでも」一般の旅客が乗れないものがある。それが貨物列車だ。物流問題が叫ばれる日本において、各地に物品を送る役割を果たす貨物列車は、日々の暮らしを支え続ける一方で、まさに神秘のベールに包まれている。
そのベールをくぐり抜け、貨物駅を探訪し、さらには貨物列車に何度も添乗することになった長田昭二氏の著書『貨物列車で行こう!』より、一部を抜粋して転載する。
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ついに貨物列車に乗る!
隅田川駅を見学した前日の11月12日月曜日。記者はJR貨物広報室長の山田哲也さんと土浦にいた。昼過ぎに着いて食事をしながら貨物鉄道を取り巻く社会状況を解説してもらい、駅の改札口で隅田川機関区副区長の堀田真樹さんと待ち合わせた。
堀田さんは柔道選手のような堂々たる恰幅で、頭には昔のSLの機関士のようなカッコイイ帽子を被っている。我々三人は、これから常磐線を走る貨物列車に添乗して隅田川駅に向かうのだ。
貨物列車には乗務員以外の人間は乗ることができない。よもやこの人生で乗れるとは思っていなかっただけに、喜びは大きい。恥ずかしい話だが、添乗が決まってからの一週間で、自分が貨物列車に乗っている夢を2度も見た。
JR東日本の土浦駅の東側に隣接してJR貨物の土浦駅がある。着発線と留置線が一本ずつあり、その間はコンテナホームが広がっている。宅配便や近くにある食品メーカーの商品などを取り扱うこの貨物駅からは、毎日上下2本ずつの貨物列車が発着している。我々が乗り込むのは、土浦を15時10分に出発する隅田川行き貨物二〇九二列車だ。12両のコンテナ車を連ねている。
旅客駅のホームと違って貨物駅のホームは低い。広い道路に貨物列車がいるような感じなので、近づくとその大きさに圧倒される。
年配の運転士がすでに乗り込んでおり、笑顔で招き入れてくれた。