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メガネ越しに、鋭い目で親父を睨みつけたのは…

 最初に親父に噛み付いたのは、親父のお姉ちゃんだった。メガネ越しに、鋭い目で親父を睨みつける。

 親父の姉ちゃん、つまり俺にとって伯母さんにあたる存在。

 俺は伯母さんのことを「かっちゃん」と呼んでいたから、ここからは「かっちゃん」と呼ばせてもらうが、かっちゃんは俺にとって母親代わりの存在だった。

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 いつもガミガミ言いながらも朝起こしてくれたり、朝飯に牛乳とパンを用意してくれたり、飲むと学校でうんこしたくなると思い込んでいたから飲みたくなかった牛乳を半ば無理やり飲ませようとしてきたりする、そんな人だった。

 そんなかっちゃんが親父に、

「急にこんな大人数、一緒に住めるわけないでしょ!」と怒る。が、親父は、

「いやいや、一緒に住むとか言ってねーから」

 と返す。かっちゃんが「は?」と親父に漏らす。親父は、

 「この家は俺のもんだから」

 と。爺ちゃんにも婆ちゃんにもかっちゃんにも、家から出て行けと言うのだ。この家の契約者は親父だから、新しい家族だけでこの家に住むというのが親父の言い分だ。俺がその新しい家族に入っていたのかどうかは定かでない。

©文藝春秋

「この家はもうあっしのもんなんだよ!」ヤンチャねーちゃんの激ヤバ主張

 かっちゃんがあまりのことに唖然としていると、今度は婆ちゃんが、

「○▼※△☆▲♨◎★●!!!」

 と、怒り狂った。もはや全くなにを言っているのかはわからないが、なにやら怒り狂った。

 婆ちゃんは、ちょっと小太りで、とにかく喜怒哀楽が激しい。そして“自分ルール”がいくつもある、孫の俺が言うのもなんだが変人婆さんだった。

 そんな変人婆さんが、もはや何語かもわからない言葉で怒り狂う。それに対して、親父の新妻であるヤンチャねーちゃんは、

「は? うるせーし! 黙って出ていけよ!」

 と、初対面とは思えぬ暴言で言い返す。

 もう玄関で大モメ。旧菅野陣営と新菅野陣営との激しい舌戦が繰り広げられた。ヤンチャねーちゃんは「この家はもうあっしのもんなんだよ!」と当然のように激ヤバ主張をする。