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「親父と見知らぬねーちゃんに、家を乗っ取られそう」3歳で母と死別したギャル男芸人(32)が語る、子ども時代の“家取り戦争”の顛末

『中1、一人暮らし、意外とバレない』より #2

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「いい加減にしろ!!!」鬼の形相でブチギレた人物の正体

 親父のことだ。どうせヤンチャねーちゃんに、

「俺の女になったら家をやるよ。家族まとめて俺の家で面倒見てやる」

 とでも言って口説いたのだろう。ほんとに勝手な人だ。残った俺らはどうするんだ。

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 ただ、親父が契約者ということは事実なようで、契約書も存在することを主張され、俺たち旧菅野陣営は、だんだんと劣勢を強いられていく。

 この時の俺は、なにが起こっているかまではハッキリわかっていなかったが「なにやらわけのわからない連中と親父に家を取られそう」ということだけは理解していた。

 旧菅野陣営が劣勢の中、俺もなんとかせねばと思い、

(この襟足の長いガキどもは、最悪俺が片付けるか……!)

 と、ガキどもを睨みつけた。だが、睨み返されたので視線を外した。

 その時だった。

「いい加減にしろ!!!」

 鬼の形相で、聞いたこともないほどの声量でブチギレたのは、爺ちゃんだった。

©文藝春秋

爺ちゃんの大活躍により菅野家の「家取り戦争」は終結

 爺ちゃんは、普段は寡黙で、基本何も話さなかった。

 だから、正直、爺ちゃんのそんな大声は、後にも先にもこの時しか聞いたことがない。おそらく親父もそうだったのだろう。いや親父だけではない。家族全員がそうだったのだろう。

 菅野家が、一瞬の静寂に包まれる。

 爺ちゃんの見たこともない形相と大声に、さすがの親父も怯む。

 その後、爺ちゃんは契約書について親父に何やらボソボソとつぶやくと、親父は新しい家族をつれて、すごすごと引き下がって行った。

(爺ちゃんスッゲー!)

 俺は心の中で興奮した。まさかあの親父をたった一言で退けるなんて。さすが親父の親父だ……!

 こうして菅野家の「家取り戦争」は爺ちゃんの大活躍により終結。

 そこから親父は、たま~~~に家に帰ってくるだけで、ほとんど家にいることがなくなったのだ。

 ちなみに、親父の新しい家族がその後どうなったのかは全く知らない。でも、親父はその後も女遊びをやめた様子はなかったので、おそらく上手くいかなかったのだろう。

 そして、この「家取り戦争」をきっかけに、この家族に我慢の限界を迎えた人物がいた。

 かっちゃんだ。

 俺はこの後……

 かっちゃんに殺されかける。

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