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 また、父が亡くなって大きな穴が開きましたが、娘が生まれ、姪っ子が生まれ、長男が生まれ、甥っ子が生まれ、和泉の名を冠した狂言師も増えました。おかげさまで狂言の公演には多くの皆様に足を運んで頂けていますし、そういう意味では無駄なことはなにもなかったと思います。まぁ、経験すれば良かったのか、しなくて良かったのかと言ったらしなくてもいいこともあったでしょうし、これから狂言道を歩んでいく子供たちにも、余計な辛い思いはしないで欲しいと思いますが。

――お父さまがご存命のときは、舞台で海外にいくときも工夫されていたそうですね。

和泉 父と僕が同じ飛行機に乗らないようにしていたときもありました。何か起きても歴史が途絶えないようにと。また、自分が家族を持った今は、海外公演に行くときは、家族に手紙を書いていくんです。自分はオフィシャルじゃない場所では、家族には自分のことをトトって呼ばせているんですけど「トトは何も後悔することはない。幸せでした」と書いて家を出ます。父が急死だったのでその影響もあるのかもしれません。

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©杉山秀樹/文藝春秋

「反省はしますが後悔はしない」和泉元彌が今後やりたいこと

――今後はどのように過ごしていきたいと思います?

和泉 長生きしたいです。憧れの父は「勢いのある芸」と言い続け57で亡くなりました。祖父は「長生きも芸のうち」と言って91まで長寿を全うしました。欲張りかもしれませんが、どちらも見本とすべき姿です。長生きすれば生き字引として伝えられるものもあるでしょうし、あるべき伝統の姿を正しく伝えていきたい。孫、ひ孫の代まで正しい伝統が伝わっていくのを見守ってあげたい。それが子孝行、孫孝行であり、父をはじめ、先祖への恩返しになるんじゃないかなと思います。

 今までの人生を振り返って幸せだったと思いますし、反省はしますが後悔はしません。反省をいかして人生100年、これから50年生きていきたいですね。今は守るものも増えましたし。一人一人が正しく輝き、これからを生きていく人たちがもっともっと狂言を観たくなるような素晴らしい世界を描いて後世に残していけるように頑張りたいと思います。

撮影 杉山秀樹/文藝春秋

INFORMATION

和泉元彌さん最新公演はこちらからご覧いただけます。ぜひお楽しみください。
●和泉会別会
~和泉元聖「釣狐」披キ~
・2024年7月13日(土)
15:00開演(14:15開場)
・水道橋・宝生能楽堂

チケットのご注文・お問い合わせ
090-3432-2856
mail@tokuro.com
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券種:SG 指定席(正面)12,000円/ S指定席(脇正面前方)10,000円 /A自由席(脇正面後方・中正面)7,000円
親子割引S指定席(脇正面前方)10,000円 /親子割引A自由席(脇正面後方・中正面)7,000円
学生割引(A席のみ)3,000円