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「酔って寝入る」から「遊女とセックス」に

奥野 真田さんは、アメリカが求めるものと、日本人の譲れないところ、両方を把握して、ベストバランスに落とし込んでくれるんですよね。

 あと僕が驚いたのは、佐伯が遊女の菊と茶屋にいるシーン。当初の台本では、佐伯は菊が弾く三味線を聞きながら、酔って寝入るという設定だったと思います。

洞口 そうそう! 私も完成版を観て「アレ?」と思っていました。

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奥野 まぁ、実は色々と変遷がありまして、日本的なものを感じられるセックス描写を入れたいということになったんです。

 ただ、そうなるとインティマシー・コーディネーター(性的な場面の撮影をするにあたり、俳優の心身への配慮と、演出意図を両立させるための調整役)が加わる。

遊女・菊(向里祐香) ©2024 Disney and its related entities Courtesy of FX Networks

 そして、「体位はどうするか」とか、「女性蔑視に見えないようにするには」とか、時代考証も含めて、インティマシー・コーディネーターがアイデアを出してくるんです。例えば、「バックからの体位は、男性優位に見えるかもしれない」とか。

 で、どう撮るか全然決まらなかったので、僕が「じゃあ僕が菊に首を絞められていれば、男性優位に見えないだろう」って言って(笑)。最終判断は、色々な人が調整をしてくれたおかげなんですけどね。

洞口 あれ、奥野くんのアイデアなの!? それは面白い話を聞きました! 

 あのシーン、私の周りの女性たちには大好評で。奥野くんが裸で立つ後ろ姿があったじゃない? あれを見て「格好いい!」「惚れました!」って言う人が続出。

©山元茂樹/文藝春秋

 さすがアイスホッケー(※奥野さんの特技)で鍛えた肉体! 奥野くんは女性キラーだなと思いました(笑)。

 でもあのシーンも含めて、第7話は奥野くんの独壇場でしたよね。弟とはいえ、虎永にあそこまで言う人が、それまで登場していないじゃない。だから、もうハラハラドキドキの展開なんだけど、その脚本を見事に演じきって。もう「あっぱれ!」って感じでしたよ。

ブレない「日本の文化や価値観をきちんと伝えたい」

奥野 脚本がすごいですよね。原作の雰囲気を尊重しながらも新たなエピソードを加えたり、よりエンターテイメイント性を高めながら全てうまく繋がっていて。絶妙の脚本だなと。しかも日本の文化や価値観をきちんと伝えたいという大前提は全くブレなくて。

©山元茂樹/文藝春秋

洞口 新しいオリジナル作品を作っている楽しさが、画面からも迸(ほとばし)っていましたよね。

奥野 本当にお芝居をしてても楽しかったです。

洞口 それにしても、本当に第7話は奥野回!と呼んでいいほど、素晴らしくて。ぜひ、あの驚異をみなさんにも見てもらいたいですね。

 

洞口依子/ヘアメイク=増田加奈、衣裳:Edwina Hörl(エドウィナホール)
奥野瑛太/ヘアメイク=光野ひとみ、スタイリスト=清水奈緒美