何千本も寄せられたオーディション映像の中で、ボールが最初に見たのが、ティーグの映像。正しい役者を見つけられるものだろうかと思っていたところ、「この人なら猿になりきれる」と感じる俳優が早速出てきたことについて、ボールは「神様からの贈り物」とまで語る。
猿として演技するための6週間トレーニング
だが、パフォーマンス・キャプチャーの技術を使い、現場で実際に猿として演技をするこの映画に挑むには、もちろん素質だけでは足りない。
ティーグをはじめ、主要な猿のキャラクターを演じる俳優たちは、撮影前、6週間の特別トレーニングに参加し、猿と人間の体の構造の違いを学んだり、ムーブメントコーチの指導を受けたりした。
「撮影が始まってからは、それ自体がワークアウトになった。とにかく肉体的にハードだったからね。すごいカロリーを消費するので、1日6回も食事をしたよ。この役のためには9キロの筋肉体重を増やし、これまでの人生で最高の肉体を得た。撮影が終わって僕の住むニューヨークに戻ると、それらの筋肉は全部落ちてしまったけれど(笑)」
実際、ノアには、高いところから落ちそうになって何かにしがみついたり、誰かと戦ったり、何かから逃げたりと、大変なことが続く。一方で、感情的なシーンもたっぷりある。
部族のみんなから尊敬される父を持つノアは、自信を持てず、密かに悩んでいる。そんな時、思いがけないことが起こり、これまで出たことのない外の世界を旅することになるのだ。
「ノアには個人的にすごく共感できた。彼の父は、息子が自分のようになることを望んでいる。でも、ノアは『自分にはできないかもしれない』と思っている。
それは、この映画を作っている間、僕自身が感じていたこと。この役は自分に務まらないのではと、僕は恐れていたんだ。それだけに、ノアがこの物語の中で自分を見つけていく様子を描けたのは素敵だったよ。彼は僕に希望をくれた」