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説明してもらおうと手紙を書いたところ…

「納得できないことが多々あったので、一つ一つ説明してもらおうと、ケースワーカーを通じて大崎郁子に手紙を書きました。すると今度は大崎の方が、『相続を放棄する』と弁護士を通じて言ってきたのです。弁護士さんからも経緯をまとめた手紙を頂きましたが、細かなことは書かれておらず、真相は分からないままでした。私が騒いだため『これはまずい』と思ったのでしょう。大崎は相続を放棄することになりましたが、この人たちは叔父の他にも同じような手口で遺産を得ているのかもしれないと思ったのです」(篠田さん)

 弁護士を通じてNPO法人から送られてきた手紙には、事の経緯が次のように記されていた。

〈NPO法人及び大崎郁子としましては、ご親族との連絡が困難な案件として、ご紹介を受けており(略)ご親族のお話を一切伺うことはありませんでした。従前居住していたご自宅の片づけ業者からも頻繁にご親族とやり取りしている様子との報告もなく、また、施設入所後、ご親族からの書面のやり取りや電話連絡等も一切なかったことから、連絡不可能と判断した次第です。〉

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 遺言書作成の経緯についても釈明があった。

〈ご自身が亡くなった後の対応を懸念しており、ご親族にも頼ることができない、施設やNPO法人に迷惑をかけたくないからという理由で遺言書作成のご希望がありました。〉

 遺言書作成の際には、NPO法人の職員一名と、大崎郁子が立ち会いの上、介助しながら作成したというのである。

 最後は、こう結ばれていた。

〈当方としましては、遺言書が無効とは考えておりませんが、ご相続人の皆様のご意向に反して、手続きを進めるつもりは全くありません。大崎においては、家庭裁判所に相続放棄の申請をする予定です。〉

 NPO法人、ヘルパー、片づけ業者、葬儀屋、寺、弁護士などが連携し、死が近い高齢者に群がって儲けようとしていたのではないかと、篠田さんは今も疑っているという。

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