さる4月3日、厚生労働省記者クラブで「こども食堂安心・安全向上委員会」の会見が行われた。会見では全国のこども食堂の開設数が2016年の調査で分かった319カ所から、2286カ所と飛躍的に伸びたことで反響を呼んでいる。また、こども食堂の安全利用を主眼とするクラウドファンディングの募集も告知した。

 委員会代表で社会活動家・法政大学教授の湯浅誠さんは「若年層の貧困と孤食の問題が顕在化して以来、『こども食堂』は知られるようになったけど、どんな場所か知っている人はまだまだ少ない」と語る。

湯浅誠さん

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こども食堂は、町内会の「子ども会」をイメージするとわかりやすい

――こども食堂は2012年に東京都大田区にある「気まぐれ八百屋だんだん」が近隣の子どもに対して食事を提供したことから始まったとされてます。2014年にメディアで豊島区の「要町あさやけ子ども食堂」が取り上げられて以降、全国規模で広がっていったそうですね?

湯浅 はい。食堂が始まったのは、子どもの貧困や共稼ぎ家庭の子が一人ぼっちで食事をする「孤食」の問題を背景としています。だけど、それと同時に「無縁」と呼ばれた高齢者の独居問題や孤独死をはじめとした身近なコミュニティ破綻も関係してますね。

 こども食堂と聞くと貧困家庭のための施設だとか、店舗をイメージしがちだけど、そういうのと違う。対象は不特定多数の子どもであって、何も制限は設けていません。例えて言えば、地域のお祭りやクリスマスの行事で公民館とかに集まっていた町内会の子ども会をイメージしていただくと、実態に近いでしょう。大人が場を設け、子どもに無料・低額な食を提供しつつ交流する試みです。場所も個人のお宅やお寺、公共施設を利用しています。

今では小学校10校・中学校5校に1つ、こども食堂がある

――爆発的なこども食堂の増加に対し、安心・安全向上委員会の栗林知絵子さん(「豊島子どもWAKUWAKUネットワーク」)も「多くて1000くらいと思ってた」と驚きを隠せない様子でした。

湯浅 僕もビックリしてますよ。全国に少なくとも2286カ所のこども食堂があるということは、現在、昨年度の全国小学校数が2万95校、中学校1万325校なので小学校10校、中学校5校につき1つ食堂があるってすごいことになっている。

 こども食堂には裏づけとなる制度もなく、補助金も出ません。それでも民間が自発的に、ホントに一個人とかが立ち上げて、ここまで広がっていった。官や組織ではない試みですから、食堂の場所もお寺や公民館で開催したり、個人のお宅だったりします。開催日も一年365日年中無休から月1回開催と様々。多種多様な食堂が全国で頑張ってるんです。