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市橋 一番驚いたのは、物件探しで訪れた不動産屋の方や隣町に住む移住者の中に私の漫画の読者さんがいたこと。読んでくれている人がいるんだと嬉しかったです。他にも、20代くらいの若い女性がポツンと建てられた一軒家の空き家を借りたけど、いつの間にかいなくなっていた……なんて話も、限界集落で聞きました。

 イカついハイラックスを乗り回すような金持ちの外国人が借りた農地に勝手に建物を建て始めて、地主と揉めていたこともありましたね。地方には色々な人が集まってくるんだなと思いました。

芸術家、医療従事者、外国人……。さまざまな移住者がいた

――いわゆる成功者と呼ばれるような人や、富裕層が移住してくるケースは多いんでしょうか。

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市橋 少なくはないですね。長く移住生活が送れるかどうかは、結局安定した生活基盤の有無によるのかなと思います。生活基盤があれば、仕事が少ない田舎でもどうにでもなりますから。実際、のびのびと創作しながら暮らす芸術家、田舎に不足しがちな医療従事者、海外企業に勤めてリモートで働いている外国人などがいましたね。

――市橋さんは、空き家バンク、飛び込みの交渉、中古物件購入、競売物件落札など様々な方法で移り住んでいます。経験上どの方法がスムーズに契約できましたか。

市橋 正攻法で、民間の不動産業者の賃貸や中古物件を探すのが良いかなと思っています。空き家バンクの場合、地元の不動産業者が絡んでいることが少なからずあって、結局物件数では、民間の方が多いことがあるからです。

標高1400メートルの激寒高原で暮らしたことも。「冬は氷点下20度を下回る事もありました」(市橋さん提供)

 また、漫画にも描きましたが、きちんと宅建業者を入れて契約した方がトラブルも少ないです。突然大家に、田畑を貸す契約はないと言われた際、私が「公開情報と違うじゃないですか」と役場に連絡したら、地元の名士だった大家は役場にまで手を回し、空き家バンクで公開していた情報をその電話中に改ざんさせたこともありましたからね……。

 田舎暮らしは、環境や人間が合わない、仕事がないなど問題が出てきます。なので、私のように「嫌なら引っ越せばいいや」という感覚で、まずは賃貸物件を選ぶのが地方移住のスタートには向いているのかなと思います。

――市橋さんは、今は競売物件に住んでいますが、落札までかなり苦労されたんでしょうか。