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 たとえば、2020年4月のコロナ禍の初期、安倍晋三首相(当時)は、歌手の星野源が歌う「うちで踊ろう」に合わせ、自宅でペットとくつろいでいる動画をツイッターにあげました。このツイートには35.5万のいいねがついており、炎上度は0.37です。しかし、数多くの厳しい批判が行われたことから、多くの人はこれを「炎上ツイート」とみなしました。

 漫画家のツイートに話を戻すと、私は社会学者じゃない……というのはさておき、このツイートを読んだ人のなかには私が原作小説を書き換えろと言っていると解釈した人もいたようです。原作小説まで書き換えてしまうとそれが書かれた時代背景までわからなくなるので、仮にそういった意見があったとしても私はそれに賛同しません。しかし、とにかくそういう細かいことはどうでもいいんだという流れになっていきます。

「パブリック・エネミー」になる

 このような騒ぎに追い打ちをかけてきたのが、「はてな」というサイトの匿名ダイアリーでした。2016年2月に「保育園落ちた日本死ね!!!」というエントリ(書き込み)で注目を集めた、内容にインパクトさえあれば注目を集められるサービスです。

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 9月12日の昼過ぎ、ここに「津田正太郎教授の規制論法の小ズルさ」という文章がアップロードされました。はてな上での注目度の大きさはブックマークの数で測定され、100を超えると少し、300を超えるとやや注目されているというぐらいではないかと思います(はてな自体のユーザー数が停滞していることから、以前ほどの影響力はないとも言われますが……)。2023年12月の時点でこの文章は336ブックマークとなっており、459ブックマークである先述のTogetterのまとめと並んで、それなりにアクセスを集めたことがわかります。

今もタイトルだけが残る匿名ブログ「津田正太郎教授の規制論法の小ズルさ」(写真:はてなブックマーク)

 タイトルからもわかるように、これは私に対してきわめて批判的な文章でした。内容について納得できる部分もあるのですが、私がツイートした動機についての記述が特に腹立たしく感じられました。

 それによると、例のツイートによって「扇動」に成功していれば、銀英伝の制作陣には作り直しと謝罪が求められる一方、私はその「功労者」となる。「仲間の界隈で地位が高まり、そちらの方面からの取材も増え、講演や原稿の依頼も来て、法政大学学内でのプレゼンスも上がる」ことを期待していた。ところが、その「扇動」に失敗したため、「個人の感想」というダサい言い訳を使って逃亡を図っている。それを許してはいけない。自分は安全なところから相手を刺しに行って、いざとなったら逃げを打つのは卑怯だ。「そのダウトが通れば相手を殺すんだから、ダウト不成立ならお前が死ねよ?」というのです。