気がつけば自己顕示欲だけで表現規制に加担し、他人を陥れようとしているモンスターのような存在として語られるように…。

 『銀河英雄伝説』のツイートが炎上した大学教授に起きた悲劇とは? 慶應義塾大学メディア・コミュニケーション研究所教授である津田正太郎さんの新刊『ネットはなぜいつも揉めているのか』(筑摩書房)より一部抜粋してお届けする。(全2回の2回目/前編を読む)

『銀河英雄伝説』のツイートが炎上した、大学教授に起きた悲劇とは? 写真はイメージ ©getty

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『銀河英雄伝説』のツイートがさらに炎上

 そのツイートから数分後には批判的なリプライが私のもとに次々と寄せられるようになりました。仕事を片づけながらですので、ずっとツイッターをみているわけにはいきませんでしたが、それでもなるべく多くのリプライや引用リツイートに対して返信をするように心がけました。対話のなかで意見の一致とまではいかずとも友好的に話を終えることができた方もいたものの、いきなり罵倒されたので返信するとすぐにブロックされるといったこともありました。9月11日は週末だったこともあり、その日は明け方までそうしたやりとりを続けました。

 批判的なリプライを寄せてくる方の大部分は、私が何らかの手段によって表現規制を試みていると考えているようでした。「男女役割分業の描き方は変更せざるをえない気がする」という私の書き方も悪かったのですが、いずれにせよ私にはそんな意図は全くなく、先にも述べたようにもっと自由に議論できればよいというのが当初の意図です。そこで就寝前に次のようなツイートをしました。

 なお、個人の感想ですので作品に何ら干渉する意図はありません。NHKに投書もしませんし、BPO(放送倫理・番組向上機構のこと:引用者)にねじ込んだりもしません。

 三期があるのを皆で祈りましょう。

 翌日、目を覚ましてツイッターをみると、事態はさらに悪化していました。なかでもインパクトが大きかったと考えられるのが、12日早朝に50万人以上のフォロワーを抱える人気漫画家が行った「ていうか架空の数百年後を描いた異惑星の社会風俗が現代にそぐわないから変えろって言いだす社会学者やべえよ」というツイートです。

 2023年12月の時点でこのツイートは約1万のリツイート、約2.7万のいいねがされています(炎上発生時から時間を経たために少し減少しています)。このツイートは私のものと一緒にツイッターのまとめサイトTogetterでも取り上げられ、多くのユーザーの目にとまることになりました。

 少し話は逸れますが、騒動の発端になった私の最初のツイートは、リツイートが1323、いいねが459となっています。一般に炎上ツイートの特徴として、数多くリツイートされるだけでなく、引用を含むリツイートの数が、いいねの数よりも多くなりがちだということがあります。リツイート数をいいね数で割ったものを「炎上度」とするなら、それが一以上になると炎上とみなせる場合が多くなるわけです(例外の一つが著名人の訃報ツイートで、いいねの数は少くなる一方、リツイートは多くなります)。

 先の私のツイートの炎上度は2.9ですから、紛れもなく炎上ツイートです。ただし、バズっているツイートでも0.8ぐらいになるものがある一方、賛否両論型のツイートの場合には炎上度が低くても賛成意見のみならず批判意見もたくさん寄せられますから、炎上したとみなされる可能性があります。