《大きく違います。札幌でヤジを飛ばしたのは一般市民。つばさの党は政治団体。ヤジの相手は、札幌は現職の首相、つばさの党は対立候補。ヤジの方法も、札幌は「アベやめろ」「増税反対」などを地声で十数秒叫んだだけ。訴訟にはなっていないが、無言でプラカードを掲げた女性も警察に排除された。つばさの党は拡声機を使ったり車で追い回したり、候補の自宅に押し掛けたりするなど実力行使をしている。札幌では演説が中止されることはなく、東京では他候補は演説の変更・中止を余儀なくされました。》
札幌のヤジとつばさの党を一緒にする言説にはどんな共通点があるか。山崎監督は以下のように論調を整理できると言う。
(1)2019年に札幌で起きたヤジは選挙妨害である
(2)札幌地裁の判決で原告が勝訴したので、警察は選挙妨害の取り締まりに慎重になった
(3)警察がきちんと取り締まれるように公職選挙法を改正すべき
そのうえで(1) について。
警察の主張は?
《札幌で起きたヤジ排除問題では、ヤジが選挙妨害として議論になったことも、警察が主張したことも、裁判で争点になったこともありません。》
警察も「ヤジ=選挙妨害」とは主張していなかったのですね。
《北海道警察が議会や裁判で主張したのは、市民がヤジを飛ばしたことで周囲とトラブルになり、それによって犯罪が起きるのを防ぐために、あるいは周囲の暴力から避難させるために行ったというもの(警察官職務執行法)。札幌地裁の判決では、警察の主張が退けられ、排除行為は表現の自由を奪い、違法だとしています。》
次に(2)について。札幌の裁判の結果、警察は選挙妨害の取り締まりに慎重になった?
《警察は、そもそも選挙妨害を主張していないため、裁判で負けても選挙妨害の取り締まりに何の影響も及ぼさないと考えるのが普通です。(編集部注:安倍元首相の)奈良での銃撃事件の警備については、警察庁が報告書をまとめ、「適切な警護計画により本件結果を阻止することができた可能性」があると結論付けている。 奈良の事件では「やるべきことをやっていない」、札幌のヤジ排除は「やってはいけないことをやった」といえます。》
(3)について。公職選挙法は改正すべき?