デビュー作『僕はイエス様が嫌い』(19年)で、弱冠22歳にしてサン・セバスチャン国際映画祭の最優秀新人監督賞を受賞した奥山大史監督(28)。

 注目の2作目『ぼくのお日さま』(9月公開)は、先日開催された第77回カンヌ国際映画祭で、斬新で独自性の高い作品を対象とする「ある視点」部門に日本人監督最年少で正式出品された。

 男女デュオ・ハンバート ハンバートの同名曲からインスピレーションを受けた本作は、北海道でフィギュアスケートに取り組む少年と少女のひと冬を描いたもの。“ひと聴き惚れ”した曲との出会いから“カンヌの先”まで、奥山監督の想いを聞いた。

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映画の細部に自身のフィギュアスケート経験が

――今回、商業映画デビュー作でフィギュアスケートを扱う上で、監督ご自身が6歳から約7年間フィギュアをやられていた経験値が活かされた部分はあるのでしょうか。

奥山大史監督(以下、奥山監督) もちろん本作の設定に活かされているとは思います。ただ、あまりストーリーラインに影響はないのかなとも思います。

 僕は主人公のタクヤみたいにアイスダンスを習ったことはないですし、男性の先生に習ったこともないですが、本編のところどころにある、スケートを滑る女の子を見て綺麗だなと見惚れるシーンや、バッジテスト(スケートの技能テスト)を受験するシーンなどには自分の経験が活きているのかなと。

奥山大史監督 ©深野未季/文藝春秋

――劇中には男の子は野球かアイスホッケーをやるのが当たり前で、フィギュアなんて恥ずかしいという描写もあります。

奥山監督 僕が子供の頃フィギュアスケート界では、まだまだ競技人口は女性の方が圧倒的に多かった記憶です。それもあってフィギュアをやっていることを同じ学年の友達には言えなかったですね。

 でも、映画を作る過程で取材も兼ねて久しぶりにスケートリンクに行ってみたら、男の子と女の子が半々ぐらいでびっくりしました。羽生結弦さんや宇野昌磨さんの活躍もあって、今は男性からも人気のスポーツなのですね。

「吃音の少年」と「ハンバート ハンバートの名曲」

――タクヤが吃音を持っているという設定と、映画のラストで流れるハンバート ハンバートの「ぼくのお日さま」の歌詞が見事にリンクしていますね。

奥山監督 元々は六本木のビルボードライブ東京で友達がアルバイトしていたので遊びにいった時、ハンバート ハンバートさんの歌を聴いて“ひと聴き惚れ”したのが始まりです。大学生の頃でした。