より遠くへと映画が届く可能性を作った上で、公開へ

 その時にまず思い浮かんだのがカンヌ国際映画祭への応募です。カンヌに出品することで、どの映画祭よりも多くのディストリビューター、バイヤーが一斉に作品を観てくれて、気に入ってくれたら映画を遠くへと届けてくれます。

©深野未季/文藝春秋

 今回、まさかオフィシャル部門の出品作に選ばれるとは本当に思っていなかったんですが。でも、映画は映画祭で上映されて終わりではありません。あくまで、ゴールではなくスタートです。

 カンヌを通して、多くの方に観ていただき、他の映画祭での上映も決めて、より遠くへと映画が届く可能性を作った上で、日本の劇場公開を迎えられたらと思っています。

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おくやま ひろし 1996年東京都生まれ。青山学院大学在学中に制作した初の長編監督作『僕はイエス様が嫌い』(19年)が第66回サン・セバスチャン国際映画祭の最優秀新人監督賞を史上最年少の22歳で受賞。
 同作は第29回ストックホルム国際映画祭最優秀撮影賞、第19回ダブリン国際映画祭最優秀撮影賞、第3回マカオ国際映画祭スペシャルメンションを受賞後、インデペンデント映画としては異例の興行形態で日本公開される。
 米津玄師「地球儀」などのミュージックビデオ制作も手掛けるほか、エルメスが抜擢した8人のクリエーターによるドキュメンタリー『HUMAN ODYSSEY―それは、創造を巡る旅。―』(21年)、是枝裕和総合演出によるNetflixシリーズ『舞妓さんちのまかないさん』(22年)、NHK『ユーミンストーリーズ』(24年)等の演出を担当。

 

『ぼくのお日さま』
STORY
 吃音のあるアイスホッケー少年・タクヤ(越山敬達)は、ドビュッシーの「月の光」に合わせフィギュアスケートを練習する少女・さくら(中西希亜良)の姿に、心を奪われてしまう。
 ある日、さくらのコーチ・荒川(池松壮亮)は、ホッケー靴のままフィギュアのステップを真似て何度も転ぶタクヤを見つける。タクヤの恋の応援をしたくなった荒川は、スケート靴を貸し、彼の練習につきあうようになる。
 しばらくして荒川の提案から、タクヤとさくらはペアでアイスダンスの練習をはじめることに…。

STAFF&CAST
監督・撮影・脚本・編集:奥山大史/主題歌:ハンバート ハンバート「ぼくのお日さま」/出演:越山敬逹、中西希亜良、池松壮亮、若葉竜也 /2024年/日本/90分/配給:東京テアトル/9月公開予定