テレビ離れがささやかれて久しい。とはいえ、テレビの広告効果はいまだに大きく、番組で紹介された商品が売り切れになったり、お店が行列になることは珍しくない。実際、サイゼリヤは社長がバラエティ番組へ出演したことで、店の利益が6倍まで伸長したという。しかし、同社はそれ以降、原則的にテレビ出演は封印したのだとか。いったいなぜなのか。
サイゼリヤの元社長である堀埜一成氏の著書『サイゼリヤ元社長が教える年間客数2億人の経営術』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)の一部を抜粋して紹介する。(全2回の2回目/前編を読む)
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テレビ出演で、借金を一気に返済
2009年4月に私が社長を引き継いだのは、デリバティブの失敗でサイゼリヤが140億円の経常赤字に陥った時期でした。つまり、借金を抱えた状態でバトンタッチされた──外からはそのように見えると思いますが、私としてはそうではなかったと思っています。
正垣社長はこの時を待っていたようです。
ここが私にとって、社長を引き継ぐ最良のタイミングだったのです。
デリバティブ返済のために140億円のマイナスといっても、営業利益は黒字でした。私がどんなにボンクラであっても、何もしなくても経常利益および純利益は確実に大幅なプラスになります。こういう点も普通の会社ではないように思えました。つまり、何もしなくても数年たてば借金は返済できる状況でした。
とはいうものの、抱えている借金は早く解消したいと考えました。社長になっていろいろやりたいので、そのための原資がいる。金の心配なんてしたくなかったのです。
というわけで、社長就任1年目はとにかく利益を出そうということで、禁じ手を使いました。テレビに出たのです。お笑いコンビ・タカアンドトシMCのバラエティ番組『お試しかっ!』(テレビ朝日系列)の名物企画「帰れま10」や同じ系列のココリコMCによるバラエティ番組『いきなり!黄金伝説。』に出たのです。
そのたびにサイゼリヤはとんでもない売上を弾き出しました。最後にテレビに出たのは10月でしたが、同月の利益が6倍にもなったのです。既存店の売上が軒並みアップして、上がった分はほぼ利益になったことで、140億円の借金は1年もかからずに返せました。目標を達成したので、そこからはテレビに出るのはやめました。