タトゥーを彫りに新宿2丁目のラブホへ15年通う
ーーすぐにYASさんのスタジオへ。
西本 YASさんって仙台なんですよ。で、夜行バスで通おうかなと考えたけど、さすがに大変そうだなって。そうしたら東京にお客さんがいっぱいいるので、東京に出張して2週間くらい滞在するって教えてもらったんです。いいタイミングだなってことで、東京で入れてもらって。その2週間で、3回か4回か通って、右腕を埋めてもらったんですよ。
YASさんは毎月東京に出張してきたんで、そこから月イチで15年彫ってもらいました。
ーー出張となると、どこかに場所を借りて。
西本 そうです。一番最初は渋谷だったんですけど、中野とか幡ヶ谷とかを転々として、最終的に落ち着いたのが新宿2丁目のラブホテル。公園あるじゃないですか。
ーー新宿公園。花園通り沿いの。
西本 YASさんがあの近くのラブホの部屋を取って、彫っていたんですよ。そこって出入り自由なんで、何も言わずに出張スタジオみたいに使っていて。
ラブホの人は僕たちのことをカップルだと思ってたっぽくて、「また、こいつら来たよ」的な目で見られてましたね。おまけに、入る時はなんでもなかったのに、出てきたらタトゥーが入ってるじゃないですか。だから「あれ? 雰囲気が変わったな」みたいな不思議な顔をしてて。
ーーラブホの部屋は、休憩と宿泊のどちらで。
西本 延泊ですね。ずっと借りるんですよ。もう会場みたいになっていて、YASさんのお客さんがどんどん来るんで。僕が約束の時間に部屋へ行ったら、前のお客さんが押してて彫ってる最中だったことがありましたよ。
最後のほうは、YASさんって有名な彫り師が部屋を使っているってことが広まっていて、フロントの人も「どうぞ」みたいな感じになりました。
15年、そのラブホへ彫りに通ってたので、今でも近くを通ると懐かしい気持ちになりますね。
「こういう雰囲気で」と画像を渡し、あとはYASさんがデザイン
ーー彫ったところは保護しなきゃいけないので、ラップとかを巻いてるわけですよね。知らない人がそれを見たら「?」といいますか。
西本 僕、ラップとかいらない派なんで。そのままワセリン塗って、拭いて、終わり、みたいな。
ーー1回につき、何時間くらい彫るのでしょう。
西本 結構やってましたね。7時間ぐらい。20代の若い時だったんで長時間やっても持ちましたけど、今は無理ですね。死にますね。
指先とかアキレス腱とかって、痛いんですよ。若さもあったけど、出来上がりが見たいという気持ちが痛さよりも勝ってましたね。で、左腕、胸、左脚、右脚、お尻、背中、首、顔と入れていって。
ーーYASさんに彫ってもらう際は「今日はこんな感じで彫るから」みたいな話をするのですか。