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西本 まず、抽象的な画像をYASさんに渡すんですよ。たとえば「今日は脚を」って時は、宇宙の画像を渡して「こういう雰囲気で」って言うと、YASさんがボールペンで脚にデザインを描いて。で、毎回それがかっこいいデザインなんですよね。

 だから、ツーカーというか。彫ってる最中のやつは「大丈夫か、これ」って感じなんですけど、出来上がりはメッチャかっこよくなるんで。それでも最初の頃は、しっかり描いてもらって「じゃあ、これはこうしましょう」って詰めてましたけど、途中からはセッションというか。

好奇な目で見られるようになり、一時期は心療内科に通院していた

ーー西本さんの好みをきちんと理解していると。

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西本 そういう感じでしたね。だから、たぶんYASさんが一番入れてるのも僕だと思いますし、YASさんが死んじゃったら他の彫り師には絶対入れさせないですし。そこは、固い信頼関係みたいなものがありますね。

 

ーーとはいえ、本格的にタトゥーを入れるようになった一方で、精神的に病んで心療内科に通っていた時期もあったそうですが。

西本 今でこそ、「NISHIMOTO IS THE MOUTH」ってブランドをやってることでYouTubeとかいろんなメディアに出て認知されてるところがありますけど、当時はアパレルショップの西本だったんで。

 誰も知らないので、人から「なんだ、こいつは?」みたいな目で見られるんですよね。まあ、自分が自意識過剰だったり、ネガティブなとこもあって、そういうのがことさら嫌だなと感じちゃって、めまいなんかが起きたりしたので心療内科に行って。

 あと、東日本大震災のトラウマもプラスされてしまって、とにかく不安定でしたね。

 

自慰行為直後に大きな地震を体験したのがトラウマに

ーー2011年3月11日は、アパレルショップに勤めていた頃ですよね。東京にいたわけですか。

西本 参宮橋にある、5階建てのマンションの5階に住んでたんです。5階にドンと家を乗っけたようなボロい作りで、周りを気にせずにデカい音を超出せる部屋だったんですけど。

 あの日、YASさんが東京に来ていて。自慰行為したら彫ってもらいに行こうと思ったんですよ。「チャリで新宿まで行くか」って。で、行為が終わった途端にグラグラッて揺れて。ガンガン物が落ちてくるし、経験したことのなかった大きな揺れだったから、本気で怖くて。揺れが収まって、どこに電話を掛けても繋がらないし。

 そうしたら、なんか知らないけど「今日ってタトゥー入れられます?」ってYASさんから電話が掛かってきて。「マジで? さすがに今日は絶対無理っしょ」ってなって、「ちょっとキャンセルします」と答えて。

ーー自慰行為直後に大きな地震というのは、たしかにこたえますね。

西本 そうなんですよ。ものすごく解放的な時に来たんで、ものすごくショックで。その地震の体験がトラウマにもなっていて、今でも歩道橋を渡っていて、下を電車やトラックが走って揺れると軽くめまいがしますね。