「強盗をする前には、弱い人を助けたいという思いがあり、そのために自分を犠牲にすること、それが美であり、正義だと思っていました。歴史を学んでいたので(歴史上の人物に)憧れていた。しかし実際強盗をしてみて、シングルマザーを救うために弱い人を傷つけた。そのやり方は自分が思う美や正義とは感じられなかった。そのため、強盗は悪いものだと思うようになった」
「女子どもを殴らないやつは報酬ないからな」
「強盗は悪いものだと思うようになった」と言うが、山田被告は目黒区の強盗未遂から1カ月も経たないうちに中野区で複数の共犯者とともに約3000万円を被害者宅から奪う事件を起こしている。
「目黒での事件と同じ指示役のキムから前日の夜に《強盗するから来い》とテレグラムで連絡がありました。共犯者と合流した後はタバコを吸って、コインパーキングで車を停め、そして被害者宅へ行きました。その間、車内でキムから仕事の内容の説明がありました。また、被害者宅には被害者の男性のほか、女性と子どもがいることも知らされました。《子どもを殴る奴を決めておけ》との指示があり、共犯者の1人のWが『俺がやる』と言いました。キムは《女子どもを殴らないやつは報酬ないからな》と言いました」
被害者宅へ着くと、強盗グループの2人が宅配業者になりすまし、他のメンバーは覆面をして後に続いた。
「なりすました2人はNとW。強盗の経験があるようでした。他の人は初めてのようでした。僕とWは1階を調べました。どの部屋も散らかっていました。他のメンバーは2階へ行きましたが、僕は行っていないので様子はわかりません。1階では被害者をWが殴っていました。僕はそれを見て、他の部屋を探していました。すると2階からHとFが降りてきましたが、Hが『逃げたほうがよくね?』というので、僕はHとFを逃がしました。僕はそのままいて、NとWが被害者を殴っているのを見ました。Nが飛び蹴りをしていました。被害者は現金のありかを話し、Nは現金を袋に詰めていました。その後、逃げました」
この事件では、逃走中に1人が逮捕されている。指示役のキムはそれに激怒し《なんで逮捕者を出してるんだ! 俺たちのグループに泥をぬりやがって》と山田被告を叱責したという。