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「時代は加速度的に進む。想定よりずっと早く到来する」

 マモーとは1978年に公開されたアニメ映画『ルパン三世 ルパンVS複製人間』に登場する巨大な脳味噌だ。クローン技術で1万年以上生きてきたという設定になっている。

「時代はおそらく加速度的に進み、想定されたよりずっと早く到来します。だからこそ、先端技術を使いこなすための『デジタル倫理』が必要です。法規制や制御技術などで人間にとって安全な道具にしていく手段を本気で考えなければならなくなっています。

 日本では『面白いから使ってみよう』という方に流れすぎたのではないでしょうか。主役は人間なんだという『人間主導のデジタル社会』という基本テーゼを、今こそ確立すべきです」

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 そこで出てくるのが、「AIより、えぇ愛(いい愛)」という平井知事ならではのダジャレだ。

「AIはあくまでも道具です。社会を成り立たせているのは、やっぱりお互いの信頼関係や絆、助け合い、そして愛なのです」

住みやすい街。「えぇ愛」があちこちにある(鳥取県米子市内)©葉上太郎

 では、どうするのか。平井知事は先端技術を人間主導で扱える社会にするための実験を鳥取県から始めたいと考えている。

「まずは10項目の『自治体デジタル倫理原則』を鳥取県庁として一つの憲法にしていこうと考えています」

 1住民自治、2人権保障、3インクルーシブ、4パートナーシップ、5課題解決志向、6人間主導、7リテラシー、8透明性、9ガバナンス、10機敏性--の原則だ。

小回りがきく鳥取県の取り組み。企業、国が考えるきっかけになれば……

 こうした社会づくりには、行政職員だけではなく、住民にもフェイク情報などを見極める力を持ってもらう必要がある。先端技術をどういったことに使うべきか、使わざるべきか、どのような使い方をすべきか。県民それぞれが考えていかなければならない。

「ベンダー(IT関連の製品やサービスを提供する業者)の皆さんのシステム開発も重要で、多くの方々の理解があってこそ可能になります。鳥取県は人口が53万人強ですが、障害者の問題だとか、危険ドラッグの対策では、全国の先頭を走ってきました。小回りがきくから、何かに取り組む時にスピード感が出てくるのです。

 故スティーブ・ジョブズ氏(元Apple最高経営責任者)は『Great things in business are never done by one person. they're done by a team of people』と述べました。『事業における素晴らしいことは、決して一人の人間でなされるものではなく、人々のチームで初めてできるものだ』というのです。鳥取県という小さな単位で始める実験ではありますが、国全体の課題としてどうすべきか、そして企業でも考えていただくきっかけになればと思います」

 平井知事はそう力を込めた。

撮影 葉上太郎