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 逆に、データに現れない政策課題もある。ネット上の学習データから最大公約数で答える生成AIにとっては極めて不得意な分野だ。

 引きこもりは最たる事例だろう。

「表に出て来ない方々なので、なかなかデータはありません。家族も事情を明かさない傾向があります。だから、自治体の担当者が画面上のデータだけを相手にしていたら、引きこもっている人への対策は全部なくなってしまいます。むしろ、どうやって探すかが大事なのです。私達はアウトリーチ(対象者のいる場所に出向いて働きかけること)を重視していて、実際に一軒一軒歩いて引きこもりの方を探すようなこともしています。

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 新しい技術ができると、『もうこれで十分だ』と思いたくなってしまいますが、我々はあえて戒めなければなりません。ソフトウエア開発ではアジャイル(機敏に対応するという意味)という言葉が用いられます。対象者にちゃんとアプローチできるか、もしくは的確なアウトプット(出力)ができるか、臨機応変さや柔軟性が求められるのです」

目の不自由な方、耳が聞こえない方の暮らしはキーボードをいくら叩いても出てこない

 こうした傾向は、鳥取県が全国最先端の取り組みをしてきた盲人や聾唖(ろうあ)者の対策でも同じだ。

手話による観光案内ビデオが流されている(鳥取砂丘)©葉上太郎

「目が不自由だったり、耳が聞こえなかったりする方が、世の中にどれだけいるか。そうした皆さんがどのようにして暮らしているか。たぶんパソコンのキーボードをいくら叩いても、インターネットからは答えが出てこないでしょう。私達は今でも苦労しているのですが、人々のネットワークを頼り、face to face(面と向き合って)で情報を集め、どのような人がいて、どのようなことに苦労しているか調べています」

 鳥取県は15年前から『あいサポート運動』(地域で暮らす人には誰であっても障害のある人と共に生きるサポーターになってもらおうという県独自の運動。他県にも広がっている)を行ってきました。様々な施策を展開するなかで、盲聾の方々のセンターを作ったり、集まる場の提供をしたりしてきて、ようやくどこにいらっしゃるかが分かってきたのです。

鳥取県は2013年、全国で最初に手話言語条例を制定した。「全国高校生手話パフォーマンス甲子園」が毎年開かれており、この自動販売機の売上げの一部は開催費に充てられる(鳥取県米子市)©葉上太郎

 本当に行政ニーズがある人を見つけなければならない時、インターネットなどでは出てきません」

 一方、先端技術が役立つ分野でも、留意しなければならないことは多い。平井知事はこれについても実例を挙げて説明する。